死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第14回
とくに若者は、「金がない」とグチる前に時間の活用法を考えよ

時間とお金が関係あるのは、
鉄道の料金をみればわかります。
特急、急行、各駅停車で料金が違う。
早く着くほど高いわけです。
郵便の速達も同じです。

一般的にいって、スピードアップするものは、
なんでもお金がかかると考えていいでしょう。
だから、東京から大阪へ行くのに、
鈍行の何倍も払って新幹線に乗る。
しかし、大阪に着いてからの時間を、
同じだけ合理的に使っているかどうか。
かなりいいかげんに使っている人が多いと思うんです。

時間の使い方というのは、お金を余分に払って、
いろいろな時間を短縮するだけでは、何にもならない。
それ以外の時間を、
どれだけ有効に使うかどうかがたいせつなんです。

お金を貯めるには、拘束された時間を
いかに上手に使うかも重要なポイントです。
いちばん時間を徹底的に拘束されるのは、監獄の中でしょう。
二十四時間、毎日、拘束されて自由がないんですから。

司馬遷は牢屋の中で、
世界的な名著である『史記』を書いたわけですが、
これなんかは、拘束された時間を
もっとも上手に使った例ではないでしょうか。

私の場合、たとえば講演に行くのは拘束された時間ですが、
往復の車中や飛行機の中とか、
前日ホテルに泊まって翌日の講演までの時間とかは、
自由に使えるわけです。
私は、その時間に原稿を書いたり、
本を読んだり、できるだけ有効に活用するようにしています。

サラリーマンだって同じだと思うんです。
たしかにサラリーマンは、
拘束されるわりにはそれに見合った収入をもらえない稼業
という面はあります。
人の二倍働いても、給料を二倍くれるわけではない。
働きすぎると、かえって上司や同僚の反感を買うおそれもある。
だから、「休まず、遅れず、働かず」
がいちばんいいんだという考え方も成り立ちます。

俺は、いまのままでけっこうという人は
それでいいんですけれど、
そんなぬるま湯的な生活から脱したい人は、
やっぱり拘束された時間を上手に使って、
何かをつかまなければなりません。
それが何かは、その人が描いている設計図によって違ってきます。

会社にいれば、仕事をしながらでも学ぶべきことは、
いっぱいあると思うんです。
目標が決まったら、それに集中的に時間を使うようにすれば、
その人の人生は大きく変わってくるのではないでしょうか。

とくに若い人は、時間があり余るほど残されているわけですから、
それをどう有効に使うかを考えてほしい。
どうせお金はないんです。
ないお金に心をくだいても仕方がない。
それより、時間をうまく使う工夫をするんです。
それが、お金を貯めることにもつながっていきます





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2013年4月15日(月)

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