死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第48回
力ードが役に立つのは、海外旅行のときだけ

私は、十年ほど前、はじめてJCBのカードを作りました。
カード会社の担当重役をしている友だちから、
「カードはタダなんだから、
一枚くらい持っていたってバチはあたらないよ」
とすすめられたからです。
義理で作ったカードでしたから、
結局、十年間一度も使いませんでした。
おそらく、JCBのほうでも
「つまらんお客だ」と思ったのでしょう、
とうとう更新のカードは送ってこなくなりました。

私の場合、カードを使わないように
心がけていたということもありますが、
使う機会がなかったというのがほんとうでしょう。

「現金がないときだけカードを使う」という、
私なりのルールでいくと、現金を持たないことがありませんから、
結局、カードを使う機会がないのです。

ただ、海外旅行にひんぱんに出かけるようになってからは
カードをよく使うようになりました。

アメリカへ行くと、カードを持っていない人間は
もぐりと思われるほどカードが普及しています。
アメリカでは、カードはステータスシンボルのようなもので、
カードがないから「現金で払う」と言っても、
受けつけてもらえない場合があるのです。

ついでに言えば、私ははじめのころ、
アメリカン・エキスプレスの
ゴールド・カードというのを使っていました。
私が加入したころ、
アメックスのゴールドは年間会費が一万円でした。

私は年に、二、三百万円はカードを利用しました。
買い物の中味にもよりますが、
アメックスは支払いの際に六パーセントくらいの
コミッションを要求します。

六パーセントとすると、
三百万円で十八万円にもなります。
ですから、私などよいお客なのに、
欲張って、お客に一言の挨拶もなく、
年会費を一万五千円に勝手に引きあげてきました。

アメリカではそんなに手数料をとっていないのに、
日本人をなめてかかった商法です。

アメリカン・エキスプレスの
トラベラーズ・チェックはいまでも使っていますが、
カードはビザとダイナース・クラプに替えてしまいました。
うちの子どもたちも、期限がくると、
アメックスはやめているようです。

何の特典もないのに、
五千円も八千円も高いのは、バカらしいですからね。





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2013年5月19日(日)

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