死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第64回
ニ十代の経験を三十代で活用できるかどうかが、
お金を貯める決め手

二十代の経験がその後の人生に生きるということでは、
人間関係も同じです。
大学を卒業して新入社員として会社にはいっても、
しばらくすると別の会社に移る人もいるでしょう。

みんなから惜しまれてやめていく人は、
その後、むかしの同僚のところに遊びに来ても歓迎されるし、
困ったときには相談にのってもらえる。

ところが、やめるときに大ゲンカをして、
「あんなやつ、やめてせいせいした」
と言われる人もいるんです。

サラリーマンはひとつの会社に
定年まで働くことが多いものですが、
人間関係という財産を持っているかどうかで、
その人の生き方はかなり違ってきます。

過去の経験を生かす術を心得た人なら、
職場を替えるたびに月給が上がって、
地位も上がっていく。
過去に経験をしたことが、
すべてその人の血となり肉となっているからなんです。

それに対して、過去がまったく活かしきれない人は、
職場を替えるたびに振り出しに戻って、
またはじめからやり直さなければならない。
この差は、年をとるにつれて大きくなるんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、こうした二十代の経験が、
家を建てる場合の土台になるとしたら、
三十代は骨組みというところでしょう。

まだ、完成されてはいないので、
お金が貯まるまでにいかないかもしれないが、
確実にお金を貯めるチャンスはふえる。

具体的に言えば、二十代のさまざまな経験をもとに
自分にもっとも合った仕事を見つける。
それからは、独立をして
どんな生き方をするかは人によって違うでしょうが、
それを実行に移すと、
三十代の十年間はあっという間にすぎてしまいます。
二十代のときの十年とは雲泥の差です。

時間には、主観的な時間と客観的な時間というのがあります。
客観的な時間は、物理的なものですから、
一定の時間しかありません。

それに対して主観的な時間は、
自分が長く感ずるか短く感ずるかということです。
二十代のときの主観的な時間は、
何をやればよいのかわからないということもあり、
長く感じられるものですが、
三十代のそれは二十代の体験をもとに
仕事に活かそうと夢中になりますから、
あっという間にすぎてしまうのです。





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2013年6月5日(水)

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