石原新さんが歩む21世紀型日本人ビジネスマンへの道

第114回
売り手(作り手)重視ですか?買い手重視ですか?

このところ苦戦を伝えられるソニーですが、
新任社長の中鉢氏が、
「カスタマービューポイント」という言葉を
記者会見等の席で何度も使っているのに興味を覚えました。
この「カスタマービューポイント」という概念、
実は案外難しいと思います。
「消費者主権の時代」と言われていますが、
本当に私たちは何から何まで、
自分たちの欲しいモノが何だかわかっているのでしょうか?

ソニーの代表的な製品の一つである「ウォークマン」ですが、
あえて乱暴に言い切ると、
「音楽を気軽に持ち運びできる」
ことを教えてくれた製品であったわけです。
確かにカタチになってみると、
「なるほど、これは便利だねぇ」となりますが、
当時、「今あなた何が欲しいですか?」と聞かれて、
「音楽を外でも気軽に聞けるモノ」と答える人は、
想像ですが、あまりいなかったのではないかと思われます。

つまり、デジタルカメラとかビデオデッキとか、
我々がそのものを知っており使い方がわかっていれば、
「画質が良いのが欲しい」とか、「軽くしてくれ」とかいう
具体的な要望が出てきて、それにどう応えていくか、
という話になるのですが、
ソニー(あるいは盛田氏)のすごさは、
自分たちの持っている技術でもって、
「なるほど」と我々が関心する製品を
初めてカタチにしたところにあったわけです。

それが、
「カスタマービューポイント」を重視するということになると、
消費者が欲しがるもの、
つまり今世の中に存在するものをいかに良くしていくか、
という部分に注力していく、ともとれます。
辰巳渚さんがご自分のコラムで
「お客が欲しいものだけを作っていては
ブレークスルーは生まれにくく、
世の中はつまらない商品だらけになってしまう」
と書かれていましたが、傾聴に値すると思います。

これは、技術レベルの問題ではありません。
事実、ソニー社内でも、
当時は「こんなただ音楽が聴けるだけのモノが売れるのか?」
という技術者達の意見を盛田氏が押し切ったようです。
「!」、という商品を世の中に送り出せたら、
経営者としては超一流、といってよいのかも知れません。


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2005年7月14日(木)

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