服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第10回
美しい爪を持つ男

男はなぜネクタイを締めるのか?
「それは毎朝の爪の状態を点検するためである」
とも言えるでしょう。

ネクタイは今、男の服のなかで
ほとんど唯一の絹製品であります。
しかも指先を使ってゆっくりと結び上げる。
もしこの時、爪先がボロボロになっていたなら、
ネクタイの表地にひっかかるはずです。
場合によってはネクタイを傷つける結果にもなるでしょう。

極上のネクタイを上手に結ぶには、
常に爪の先を磨いておく必要があるのです。
そしてこのことが人間関係を
よりよく築くための出発点ともなるのだと思います。
たとえば人と会って握手する時に、
相手の手や指をひっかくようでは困ります。
あるいは愛する女性の髪を愛しく撫でようとして、
爪がひっかかってしまったならどうでしょうか。

むかし外務大臣をつとめた河野一郎は
爪にマニキュアをほどこしていたそうです。
おそらく男のマニキュアとしてははやいほうでしょう。
しかしマニキュアの前に、爪の手入れを考えるべきです。

爪の手入れといえば誰しも爪切りを思い浮かべます。
でも、爪を切るのは次善の策で、
本当は爪やすりを使うのが理想的です。
3日に1度、丁寧に爪やすりで手入れをする。
こうすれば爪切りの必要はありません。
使いやすい爪やすりを1本用意しておけば、
やがて習慣となって、爪を美しく保ってくれるでしょう。

正確に言えば「爪やすり」と「爪磨き」とは
まったく別のものです。
爪磨きは細長く、やや厚く、固いスポンジ状です。
これで爪の表面を根気よく磨いていけば、
マニキュアとは違う、自然な艶が生まれてきます。
そして仕上げとしてネイル・クリームや
ネイル・オイルを使う。
これはハンド・クリームの爪版で、
爪を守り、爪の表面に光沢を与えてくれるものです。

最後にひと言。爪の手入れは
けっして人前でするものではありません。
どうぞお一人の時に。


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