服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第48回
上手なチョッキの着こなし

チョッキの一番下のボタンを外すのはなぜだか知ってますか。
チョッキのボタンはたいてい6つということになっています。
時に5つということもありますが、
クラシックなチョッキは必ず6個付いています。
そしてこのチョッキのボタンを全部留めるのは
野暮ということになっているのです。

ボタンを外そうと留めようと私の勝手じゃないか、
とおっしゃるかも知れません。
が、おしゃれの世界では必ず外すことになっています。
この習慣の直接の源はイギリス皇太子に出発しているのです。
エドワード7世(ウィンザー公の祖父)が皇太子の時、
チョッキの一番下のボタンを外した。
これがたちまち流行になった。1880年代のことです。

けれども現代のチョッキの歴史をたどってゆくと、
17世紀、18世紀のそれは膝のあたりまでの長さであり、
ボタンの数も多く、とても全部のボタンを
留めておくことが出来なかったのです。
たしかに英国皇太子は恰幅が良く、
ボタンを外したほうが楽であったのですが、
その背景に長いチョッキの歴史があったのも事実でしょう。

ところでボタンを外すか否かはさておき、
チョッキの着こなし上、注意すべきは、ネクタイの「舌出し」。
チョッキの下からネクタイの端がのぞくのはルール違反なのです。
つまりチョッキの場合には「舌出し」にならないよう、
やや短く結べば良いわけです。
が、そのつもりで結んでも、つい出てしまう。
こんな場合には、ネクタイの端を軽く内側に折込んでおくか、
パンツ(ズボン)の中に入れておきましょう。

さて、チョッキを着ることの効用は実はもうひとつあるのです。
それはチョッキのVゾーンからネクタイが
ふっくらと美しいカーブを保って結ばれるからであります。
つまりネクタイ全体のボリュームを
チョッキが支えてくれるわけですね。
チョッキを着た場合には
このボリューム感にも気をつけましょう。


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2002年11月10日(日)

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