服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第54回
ボタンがひとつ、ふたつ、みっつ・・・

どうして上着に2つボタンと3つボタンの違いがあるか、
考えたことがありますか。
スーツはもちろんとして、替上着やブレザーに至るまで、
たいていは2つボタンか3つボタンですね。
もちろんここではシングル前の上着に限って
話をすすめるとしましょう。

そもそも今のような上着の原型が完成するのは、
19世紀後半のことです。
そして直接のデザインとしては
軍服から市民服へと変化したものと考えられています。
その軍服とは5つボタンの立襟型で、
この立襟を外側に折返した時、
現在の背広襟(カラーとラペル)が生まれたのです。

今、背広の襟をよく見ると、小さなボタン・ホールがありますね。
あれは昔の軍服の第1ボタンの名残りなのです。
そういうわけで19世紀末の、初期の上着は
4つボタンということが少なくありませんでした。
これがいわば近代化されて20世紀のはじめは
3つボタンが主流となってゆくのです。

そしてさらに3つボタンを進歩させて、
2つボタンが流行となるのは1930年代のことです。
つまりごく簡単にいえば3つボタンはクラシック派であり、
2つボタンはモダン派ということになります。
表現を変えるなら、伝統派に対する近代派とも言えるでしょう。
もちろん最終的には好みの問題ということになるのですが。

むかしジョン・F・ケネディは2つボタンのスーツを着て、
その2つボタンをすべて留めて着るのを好んだものです。
これは保守と革新の折衷案であったのかも知れません。
しかしこれもケネディだからこそ許されるので、
ごくふつうに考えればルール違反になってしまいます。

ところで二者択一ということなら、
3つボタンに軍配をあげざるを得ません。
応用範囲が広いし、結局は永く着られるからです。
もしも、2つボタン上着を買うか、
3つボタンにするか迷ったなら、後者がおすすめです。


←前回記事へ

2002年11月16日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ