服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第66回
パンツの折返しにも謎がある

なぜズボンに折返しを付けるか、知っていますか。
もちろん折返しのないトラウザーズも少なくありませんが。
裾の折返し、正しくは“ターンナップ・カフ”と言います。
略してターンナップとかカフと呼ばれるのはご存じでしょう。
日本では「カブラ」とか「マッキン」の名前があります。

昔、洋服が日本へ伝えられた頃、
職人が裾の折返しを指して「コレハナニカ?」と西洋人に聞いた。
その答えは「ターニップ」であった。
実は“ターナップ”が「ターニップ」と聞えたのです。
ターニップを苦心して調べたところ、
「かぶら」であることが判明。
こうして折返しのことを「カブラ」と呼ぶようになったのです。
嘘のような本当の話。

折返しと関係があるのが、折目。
日本では「プリーツ」と言いますが、
正しくは“クリース”と呼ばれます。
この折目がパンツに付くようになったのが、
1895年頃のことです。
それ以前にはもちろん折返しもありませんでした。
ところが20世紀に入ってすぐの頃から、
折返しを付けるのが粋とされるようになったのです。
一説に、泥道を歩く時に裾を折返し、
宴会場に入ってからもそれを直すのを忘れていたものが、
新流行と勘違いされたもの、と言われています。

ごく一般のビジネス・スーツには折返しは好みの問題です。
付けるも良し、付けないも良し。
ただしヨーロッパの男たちは、
折返しのあるほうが伝統的である、と考える傾向があります。
またカントリー・スーツなどの場合には、
どちらかといえば折返しを付けたほうが良いでしょう。
でも、フォーマル・ウェアには
いっさい折返しは付けない決りになっています。
すでにお話したように、
むかしのトラウザーズには
折返しなど付いていなかったからです。

折返しの幅についてもバランスの美学があり、
裾口の狭いものほど折返し幅が広くなる傾向があります。
最適の幅を選んで下さい。


←前回記事へ

2002年11月28日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ