服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第71回
カマーバンドの着こなし術

タキシードになぜ腹帯を巻くか知っていますか。
腹帯の正しい名前は“カマーバンド”
cammerbandと言います。
実はドンス・ヴェスト(礼装用チョッキ)の代用品が
今の時代に定着したものなのです。

19世紀末にタキシード(ディナー・ジャケット)が
流行しはじめた時、必ず礼装用チョッキを合わせました。
ひとつは習慣として、
ひとつはサスペンダーを隠しておくために。
ディナー・ジャケットの流行は当然、
当時植民地であったインド在住の英国人にも伝えられます。

ところがインドの夏は暑いので、
さすがのイギリス人も涼しいチョッキが欲しくなった。
そこでインド人の風俗を取入れて、
サッシュ風のチョッキを考案した。
これがカマーバンドのはじまりなのです。

だから最初は熱帯における夏の衣裳に限って
その着用が許されていたのです。
ところがあまりにもカマーバンドが流行してしまったために、
イギリス本国でも、
季節を問わず組合わせるようになったのです。
1893年以降のことだと考えられています。

カマーバンドにはたいてい黒い絹地が使われます。
これは黒の蝶ネクタイに揃えているわけです。
これを裏返すなら、
蝶ネクタイと同一ならなにも黒無地でなくても良い、
ということになります。
それほど正式な場所でなければ、
ダーク・グレイのものやダーク・ブルー、
場合によっては水玉やペイズリー柄なども使えるでしょう。

もちろん好みによってはカマーバンドに代えて
黒のドレス・ヴェストを組合わせる方法もあります。
というよりも本来はそっちのほうが正式だったのですから。

カマーバンドにはたいていヒダを取ってありますが、
このヒダの方向が上向きになるようにするのが
正しいやり方です。
また適度な余裕をもって着用すること。
あまりきつすぎると全体が
シワになってしまいますから要注意。


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2002年12月3日(火)

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