服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第94回
着物の足もとは雪駄です

雪駄を履いたことがありますか。
雪駄は雪踏、または席駄とも書きますが、
いずれも「せった」と読みます。
古くは草履の一種で、たいていは畳表を上に張り、
裏には必ず革底にするのが特徴です。

雪の日に茶室に行くときの履物として、
千利休が考案したものと伝えられています。
天正年間(1573〜1592年)のことです。
下駄で雪の上を歩くのは難儀するもので、
また草履では水が浸みてしまいます。
さすが利休ならではの妙案であったと
感心させられるではありませんか。

スーツには靴を、着物には下駄をと、
誰もが考えるようです。
でも私は下駄はまず履きません。
たいていは雪駄。
下駄も悪くはありませんが、
洋服にたとえるならスニーカーに近いでしょう。
スーツにスニーカーではちょっと合いませんよね。
つまり洋服の靴に近い印象のものが、雪駄なのです。
男性版高級草履とも言うべき履物が雪駄です。
事実、雪駄は安いものではありません。
少なくとも靴一足分の値段はするでしょう。

着物をスマートに、ドレッシーに着こなそうとするなら、
絶対に雪駄をおすすめします。
もちろん足袋は白足袋。
かなり丈夫な履物でもあって、一足あればかなり永保ちします。
その意味ではけっして高い買物ではありません。

すでにお話しましたように雪駄には畳表が使われます。
この畳表の目が緻密であるものが、上質。
ふつうビロードの鼻緒ですが、
場合によっては革の鼻緒がすげられることもあります。
ついでながら鼻緒は「すげる」と言います。
とくに頼んで、別の鼻緒にすげ替えることも可能です。

雪駄の裏には補強のために鋲を打っています。
「尻鋲」と言います。
最初、慣れないうちは
磨かれた床などですべることがありますから、
充分注意して下さい。
風通しの良い所に
乾燥剤と一緒に収めておくとカビませんよ。


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2002年12月26日(木)

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