服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第97回
着物のコートについて考えてみよう

着物にもコートがあることを知っていますか。
寒い時にコートを重ねるのは当り前でしょう。
洋服のときにコートを着るのに、
和服のときにコートを着ないのは不自然でしょう。

着物の上に羽織るコートの代表例としては
「インバネス」があります。
ひとことで説明するならケープ付きのコート、
ということになるでしょうか。
ケープの下側は両軸部分が大きくカットされていて、
着物の袖が無理なく収まるようになっているのです。

“インバネス・コート”は
もともと西洋の旅行用外套であったもの。
それが明治になって日本に伝えられ、
次第に和服用コートとして改良(?)されたのです。
「二重回し」、「とんび」などの別名もあります。
でも、厳密には少しづつ違いがあって、
それは改良途中における
デザインの変化だと考えて良いでしょう。

色はたいてい黒で、
しっかりと厚地のウールで仕立てられます。
襟には着脱式のらっこの毛皮が付けられたりしたものです。
今はインバネスはあまり見かけない存在となっています。
しかしまったく無いわけでもありません。
たとえば古着屋や骨董品屋などで
時折見かけることがあります。
程度にもよりますが、それほど高いものではありません。
冬にも着物を着てやろうと考えているのなら、
一枚仕入れておいてはいかがでしょうか。

インバネスでひとつ気をつけたいことがあります。
それは階段の登り降りで、
インバネスの裾を引きずることがあるのです。
とにかく幅と丈があるので、要注意。
こんな時に両手で軽くインバネスを
抱きかかえるようにしてやると扱いやすくなります。

必ずしもインバネスでなくとも、
ケープ式の外套なら着物の上から楽々と
羽織ることができるでしょう。
あるいはロング・マフラーと帽子を被るだけでも、
かなり暖かいものです。

もちろん帽子にマフラー、
さらにその上にインバネスなら
どんなに寒くても平気ですよ。


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2002年12月29日(日)

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