服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第112回
スポーツ・ジャケットの細部デザインについて

エルボー・パッチというのを聞いたことがありますか。
“エルボー・パッチ”elbow patch。
「肘当て」のことです。
いかにもスポーツ・ジャケットにふさわしいデザインですが、
本来は後から自分で縫いつけたものなのです。

ツイードのスポーツ・ジャケットを10年着る、20年着る。
いやイギリスでは親子2代にわたって着ることも
珍らしいことではありません。
そうするとさすがに丈夫なツイードも
少しくたびれてくる。
肘のあたりが薄くなることもあるでしょう。
その時にはじめてスエードやレザーなどで補強したのです。
これがそもそものエルボー・パッチのはじまり。
昔は最初からエルボー・パッチが
付いていることはなかったのです。

ということはかつてのツイード・ジャケットがいかに頑丈で、
いかに永く愛用されたかが分るでしょう。
表現をかえるなら、ツイード・ジャケットは
着れば着るほど身体になじんでくる良さがあります。

スポーツ・ジャケットの基本型は
やはりシングル前の3つボタンだと思います。
もっとも応用範囲が広いデザインです。
パッチ・ポケット(貼りつけポケット)でなく、
ごく普通のフラップ・ポケットでも結構です。
場合によってはチケット・ポケット
(右側に付く小型のポケット)がついているかも知れません。

それはともかく、
好みのスポーツ・ジャケットを一着入手して、
自分でエルボー・パッチをつける方法もあるでしょう。
実はエルボー・パッチは洋装材料店などで売っています。
スエードやレザーならば、
端がほつれることもありませんから、
ただ位置を決め、つけるだけで良いのです。

同じスエードなどを利用して、
スロート・タブをつけることも可能でしょう。
左側の襟裏につける小さなタブのことで、
襟を立てた時、ボタン留めができる工夫なのです。


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2003年1月13日(月)

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