服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第193回
ステン・カラーコートは年輪が命

ステン・カラー・コートを着たことがありますか。
たぶん、これは愚問でしょうね。
ビジネスマンでなくても、ごく身近な一着だと思います。
ところが、「ステン・カラー・コート」は
純然たる和製語なのです。
アメリカでもイギリスでも
「ステン・カラー・コート」という言葉はありません。
第一、「ステン・カラー」という呼び名そもそもが
存在しないのです。

英米ではなぜか“スリップ・オン”と呼ぶことが多いようです。
「引っ掛けて着る」そんな感じの表現でしょうか。
言葉の違いはさておくとして、
「ステン・カラー・コート」が一着あると大変便利なものです。
ことに今の時期はそうですね。

暑さ寒さも彼岸まで、などと言いますが、
この頃は季節が定まりにくい。
妙に寒いかと思ったなら、急に暑くなったりする。
こんなときの体温調節には
「ステン・カラー・コート」はぴったりでしょう。

ステン・カラー・コートには
ほとんど流行というものがありません。
また一着買うと、一生着続けることができます。
ということはもし一着手にいれるのなら、
手の届くかぎり上等のものにすべきです。
もっとも財産が傾くほど高いものはありませんから、心配ご無用。
私なども英国製の上物を古着屋で見つけて、
今でも袖を通すことがあります。

ステン・カラー・コートだけは絶対に洗うな、
という意見があります。
これもひとつの見方でしょう。
第一に洗うことで防水性が低下することがあります。
第二に、これは一種のダスト・コートですから、
上着などの汚れを防ぐのが目的だからです。
第三に着込んで着込んで、古くなったコートには
とても男っぽい雰囲気が生まれるから。

不自然なほどの汚れはさておき、
まるで年輪であるかのようなごく自然な汚れは
むしろカンロクと考えるべきでしょう。
あのコロンボ警部のコートも実はダンディズムの一種なのです。


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2003年4月4日(金)

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