服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第194回
ステン・カラー・コート再び!

ステン・カラー・コートの裏側には
大きなポケットが付いているのを知っていますか。
内ポケットといえばまあそうなのですが、
位置はやや低く、かなり大型のポケットがあります。

これは想像通り、新聞を入れておくためのポケットなのです。
新聞を4つに畳んで、簡単に入れておくことができます。
つまり、ビジネス・ウェア、
そして通勤に最適のコートとされるわけです。

ポケットについて、もうひとつ。
ステン・カラー・コートの両脇にはポケットがあります。
単なるフラップ・ポケットや
フラップ&ボタンのポケットがあったりします。
そしてこのポケット内側にスリットがあって、
このスリットを使うことによって、
上着のポケットにも手が届くようになっているのです。
つまりいちいちコートを脱がなくても、
上着のポケットの中のものを取出せる。

でも、新聞用ポケットも、内側のスリットも、
すべてのステン・カラー・コートに
付いているわけではありません。
このポケットの秘密をさぐってみるのも、
より本格的なステン・カラー・コートを発見する
コツかも知れません。

ところでどうしてこんなに
ステン・カラー・コートに熱心であるのか。
私はこの宝物のようなコートを
ビジネス専用と考えるのはもったいない、と思うからです。
極端な話、ブルー・ジーンズにスニーカー、
そしてポロシャツの上にコートを羽織っても良いではないですか。
暑いような、寒いような、
気候の変りやすい今の時期にはぴったりだと思うのです。

カジュアルに着こなすステン・カラー・コートは、
上着でもコートでもなくて、上っ張りなのです。
たった今、ひっかけてきた、という感じ。
襟のあたりもクシャッとして、
立っているような、立っていないような。
無造作な、着脱した感じがこんなに似合うコートも
ちょっと珍しいでしょう。


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2003年4月5日(土)

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