服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第203回
美しいタバコの喫い方

タバコはお好きですか。一日に何本くらい喫いますか。
私はタバコは吸いません。
ただし禁煙したわけでなく、
生まれてこの方、1本も喫ったことがないのです。
あるいはタバコの喫い方について
語る資格がないかも知れません。
まあ、以下はタバコ知らずのひとり言と思って下さい。

タバコは嗜好品だということになっています。
その意味ではコーヒーや酒と似ているのかも知れません。
嗜好品であるからには、それは快感であり、
快楽であってほしいのです。
タバコを喫うことがどこかで苦痛になっているようでは、
主客転倒というものでしょう。
せっかくに嗜好品ですから、心から楽しんで頂きたいのです。

大自然のなかで、誰にも邪魔されることなく、
心ゆくまでタバコをくゆらすのは、理想でしょう。
でも、かならずしもそうはいかないところが、
タバコの難しいところなのです。
近くに人がいるところでも
快楽にひたらなければならないところが、
タバコ好きの辛いところでしょう。

でも、ここにひとつの妥協法があります。
しかも簡単な方法です。ひと声かける。
タバコを取出してこう言いましょう。
「火をつけてよろしいでしょうか?」
仮に見知らぬ人であっても、
隣に相客がいるような場合には、
「火をつけてもよろしいでしょうか?」

これはですね、言われたほうとしては
「止めて下さい」とは言いにくいのです。
本当に嫌なら逃げ出すしかありません。
でも、この「火をつけてよろしいでしょうか?」は
まるで魔法のような言葉で、
タバコがそれほど気にならなくなる。
いや、より正確にいえば、「ならば許そう」と
この上なく寛大な気持になるのです。

「火をつけてよろしいでしょうか?」と
ひと声かけるということは、
喫う方でも相手を意識することになります。
そしてこの意識こそが、
より美しくタバコを喫おうとする心へとつながってゆくのです。


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2003年4月14日(月)

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