服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第286回
三尺寝をしてみませんか

三尺寝(さんじゃくね)という言葉を知っていますか。
もちろん辞書にも出ている、
れっきとした日本語です。
その意味は、職人たちが仕事の合間でとる
ごく短い昼寝のことです。

三尺というのは、約90センチですね。
90センチの昼寝。
これは一説に、90センチくらいの狭い所で
寝るからだと言います。
また、もう一説には、陽の光が約90センチ移るくらいの
短い時間だけ寝たからだとも言われます。
まあ、いずれにしてもごく短時間の、
手軽な昼寝だったのでしょう。

むかしの職人は朝はやくから働き、
それも肉体労働が多く、
間で小さな昼寝が必要だったということだと思います。

私はむかしの職人に較べて、
たぶん朝は遅いでしょう。
肉体労働はまったくと言って良いほどしません。
たいていは本を読んだり、
たまに原稿用紙に向うくらいのものです。
でも、昼寝がしたい。
これは欲というものでしょうか。

いや、昼寝というから人聞きが悪いので、
三尺寝と言い換えれば良いのかも知れません。
あるいは少し気取って、午睡、小午睡。

朝起きてから、少しは仕事らしいことをする。
やがて昼刻で、ランチ。
ところがこのランチの後、
強烈にねむくなる時がある。
こんな場合には、三尺寝。
短い時間、簡単に寝る。
やや具体的に表現するなら、
ソファーの上で目を閉じて20分。
ところがこの20分の三尺寝の復活力たるや
すごい効果なんです。
むかしの職人の智恵はさすがだなあ、
と思わざるを得ません。

明け方、つい寝苦しくて目がさめてしまったりします。
こんな時にはもう起きてしまう。
それで適当なところで、適当な時間、三尺寝をする。
結局はこのほうが時間をより有効に
使えるのではないでしょうか。
睡眠不足にはなりはしないだろうかと、
思い悩む必要もなくなるはずです。

90センチの小さな昼寝。
たぶんこれから私の習慣になってしまいそうです。


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2003年7月6日(日)

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