服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第287回
ミニ行水の心地良さ

暑さには強いほうですか。私はダメです。
暑さに弱い、それも徹底的に弱い。
夏の日に涼しそうな顔をしている人を見ると、
うらやましくなってしまいます。

もう本当に暑くて、
耐えられなくなってしまった時は、水シャワー。
誰にでもすすめられる方法ではありませんが、
私はもうなれてしまっているので、大丈夫です。
そして確実に身体を冷やしてくれます。

ある時、いつものように水シャワーをしていて、
ふと考えてしまいました。
むかしの人は、暑い時にどうしていたんだろう、と。
クーラーも扇風機もシャワーもない時代の日本人は、
いったいどうやって身体を冷やしていたのか。

扇子、うちわ、風鈴、打水・・・。
ああ、それに行水。
一日の仕事が終った夕方、
庭に大きなたらいを置く。
で、その中にぬるま湯を入れて、身体を洗う。
風呂のようで風呂でない。
やはり身体を冷やすのが
いちばんの目的だったのでしょう。
庭なら、多少の風がある。
当然、裸で、膝下にぬるま湯。
これは涼しかったでしょうね。

ごく少量の湯で身体を清め、身体を冷やす。
しかも終った後は庭木に水をやる結果になるわけですから、
ほとんどムダがない。
いかにも日本的なアイディアですね。

でも、今は庭が貴重品ですからね。
そう簡単に庭で行水ができるわけではありません。
けれどもシャワーの代りに風呂を使って
行水らしいことはできるでしょう。
ごく少量の湯を張る。
座った状態で、膝が沈むくらいの位置でしょうか。
湯の温度はぬるま湯。
私ならたぶん水でしょう。

ミニ行水にはタオルを使ってゆっくりと身体を洗う。
それで私の場合はバス・タオルを使わないのです。
浴用タオルを上手に使って身体を拭く。
両手で固く絞って、身体を丁寧に拭いてゆく。
もう私にとっては長い間の習慣になっているのですが、
小さな筋肉トレーニングだと勝手に考えているのです。
部屋の温度が多少高くても、
後でのミニ行水の気持良さを考えれば、
なんてことはありません。


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2003年7月7日(月)

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