服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第326回
食日記初公開

日記をつけていますか。
私自身は日記とは無縁の人間です。
日記なんて続けられるはずがない、
と信じているところがあります。
ところが最近になってちょっと事情が変ってきました。
きのう、おとといのことはなんとか覚えている。
けれども5日前、1週間前に
なにがあったか思い出せない。
これはいささか問題ではないか、
と思うようになったのです。

そこで日記なのですが、
ここにひとつの名案があります。
ごくふつうの日記ではなくて、食日記にする。
生活全般のことを毎日書くのは無理にしても、
食日記なら続けられるのではないか。
きのう何を食べたのかを書く。
誰に読ませるでもなし、
自分自身へのメモ代りなのですから、ほんの1行2行。
これならいくら私のようなモノグサ人間でも
続けられるでしょう。

朝でも昼でも夜でも、
記憶に残しておきたい食風景を個条書にしておく。
これなら簡単です。
ちょっと練習してみましょうか。
えーきのうの夜は何を食べたっけ。

だいたい私の場合、
夕食を自宅で食べるのは週の半分くらい。
3日か4日は外食ということになります。
家での夕食は家人が料理したものを静かに食べる。
順序としては食前酒を少し飲んだ。
きのうの夜はマティーニ。
ジンをベースに自分で作る。
クルミをつまみながら、
ドライ・マティーニ1杯をゆっくり飲む。
そのうちに前菜が出る。
前菜はキノコのマリネ・サラダ風。
ライ麦パンを適度に切って食べる。
オリーブオイルに塩を混ぜておいて、
少しつけて食べる。
マティーニを終えてワインを開ける。
「ネロ・ダヴォラ」(モルガンテ 2000年)
シシリアの赤ワイン。
印象的な深味があって、好きなワインのひとつ。
到来物のスペインの生ハム数種盛り合わせ。
なんでもドングリだけで育った豚なんだそうで、
すこぶる柔かく、すこぶる美味。
次にサフランで味つけしたリゾットを食べる。
これも私の大好物。
デザートは抹茶のアイスクリーム。―
恥かしい感じはするものの、
記憶保持には絶対役立ってくれるだろうと確信しています。


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2003年8月24日(日)

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