服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第328回
貝の皿は風流の心

器に興味はありますか。
ものは器で食う、と言います。
たしかに自分の好きな器が食卓に並んでいると、
もうそれだけで食事が楽しくなってきます。
器には凝りたいものです。
でも実際には凝っても凝ってもきりがない。
第一、和洋中のすべてについて揃えようとすると、
大きな倉庫がひとつ必要になるかも知れません。

大好きな器が少しあれば良い。
そしてその器を和洋中を通して使ってみよう。
最近の私はそんなふうに考えるようになっています。
この間なんか自分で小皿をつくってしまったほどです。

ある人が北の国から帆立貝を送ってくれたのです。
まったく便利になったもので、
カラつきの活きたままの帆立貝が、
次の日にはもう東京で食べることができるのです。
カラから外して大ぶりに切って、
刺身で頂きました。
ねっとりとした甘味があって、美味い。

さて、食べ終ってみるとカラがたくさん残った。
でも、よく見ると捨てるには惜しい。
端が欠けているものもあれば、
完全に整っているのもある。
2枚1組で、より平らなものと、やや丸味をおびたものと。
うん、これは皿になる、と思ったのです。

そこで使えそうなものを何枚か選びました。
選んだカラを固いブラシできれいに掃除します。
次によく洗って、乾かす。
もうこれだけで皿として使えるかも知れません。
でもカラの端は鋭く尖っていますから、
気をつけて下さい。

私は小型のグラインダーで端を丁寧に磨きました。
小型グラインダーは邪魔にならず、使いやすく、
カラに小さな穴を開けることだって可能です。
あるいは模様をつけることだって出来ます。
裏側を少し削って平らにして、
安定感を増すことだってできるでしょう。

まあ、とにかくこれで貝の皿が完成です。
使ってみました。悪くない。
風流と思えばそれも良し。
なによりも欠けにくいし、
仮に欠けたとしてもまた作れてしまう。
そして自分で作ったものだけに愛着がわいてきます。


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2003年8月26日(火)

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