服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第334回
シャツを上着にしてみよう

さて、何を着ようかと、迷うことがありませんか。
暦の上ではもう秋なのだけれど、
実際には真夏のように暑い。
この季節と気温のずれには困ってしまいます。

季節がどうであろうと
暑い時には涼しい格好をすればいいじゃないか。
そういう割り切り方もあるでしょう。
一方、日本人の美意識には、
季節感を大切にしたいという思いもあります。
本当に困ってしまいますね。

参考にして頂けるかどうか、
私自身はシャツを着ることにしています。
木綿や麻の、長袖のシャツとパンツ。
白無地のこともあれば、
やや太い紺などの縞柄もあったりします。
襟はワイシャツ型で、
別に奇をてらったものではありません。

ただひとつだけ変ったところがあって、
シャツの裾をパンツの外に出して着る。
そのためもあって、シャツの裾はワイシャツ型ではなく、
水平にカットしたものを選びます。
なんの変哲もないシャツとパンツですが、
私としてはシャツ・ジャケットのつもりなのです。
つまり本当はシャツなんだけれど、
今はそれをジャケット風に着ているんです、と。

素肌の上に直接シャツを着るわけですから、快適です。
クーラーの効いた部屋でも寒いということはありません。
たしかに上着は着ていませんが、
さりとてそれほど失礼な格好でもありません。
私自身は勝手にこのシャツ・ジャケットが気に入っています。
汚れたなら、洗濯機で洗って、
自分でアイロンがけをすれば良いわけですから簡単です。

私の小さな夢として、
いつかシャツ地でパンツを仕立ててもらいたいなあ、
と考えています。
丈夫な、綿のシャツ地。
もちろんブルーやグレイといった色にします。
白や黒というのも良いでしょう。
それでこのパンツの色に合わせた色無地や
柄物のシャツ・ジャケットをつくる。
これを上下組合わせて着ると、
快適なシャツ・スーツが完成するのではないでしょうか。
おしゃれとは
まず自分自身の心地良さが基本にあるべきです。
もう少し自由な発想をしても
良いのではないでしょうか。


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2003年9月1日(月)

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