服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第341回
本式のカフス・ボタンとは

コンバーチブル・カフスというのを知っていますか。
とりあえずシングル・カフスなのですが、
カフス・ボタンでも
留められるようになっている袖口のことです。
というよりも、ごく普通にシャツを買うと、
たいていこの式になっています。

さて、私自身はコンバーチブル・カフスに
カフス・ボタンを留めたことがありません。
もし買ったシャツの袖口がそうなっていたとしても、
必ずシングルのカフスとして着ます。
そしてもしどうしてもカフス・ボタンを使いたいのなら、
ダブル・カフスのシャツにします。
シングルならシングル、ダブルならダブル。
前者は貝ボタンで、後者はカフス・ボタンで留める。
このほうがはっきりとして良いのではないでしょうか。

そもそも「コンバーチブル・カフス」というのは
和製英語ではないでしょうか。
国際ファッション基準、というものがもしあるとすれば、
このコンバーチブル・カフスは
洗練された着こなしとはみなされません。

シャツの袖口にカフス・ボタンを飾る前に、
ちょっとこのことを考えてみて下さい。
イエスかノオか。
たったこれだけのことで、
格段にセンスが良くなるはずです。

袖口がちゃんと二重に折返されている。
この場合にはもちろん、カフス・ボタンで留めましょう。
ところが、今、これだけ物があふれて、
ファッションが進歩しているのに、
本格的な、上品なカフス・ボタンが少ない。
困ったものです。

どちらかといえば
ヨーロッパでは小型のものが好まれ、
アメリカでは大型のものが好まれる傾向があります。
そしてさらには裏側をクリップ式で留めるものは、
略式だとされます。
裏側も表同様のデザインで装飾されたものが、
本式のカフ・リンクスなのです。

―ここでもう、ああ面倒くさいなあ、と思うようでは
カフス・ボタン愛好家としては失格かも知れません。
これは面白そうだなあと考える人にこそ
カフス・ボタンは似合うのです。


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2003年9月8日(月)

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