服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第342回
裏表のないカフス・ボタンです

シングルのカフスに
カフス・ボタンを飾ったことがありますか。
この場合の問題点は、
ふつうの貝ボタンが邪魔になることです。
カフス(袖口)の上側はそれほど問題がないように思えます。
でも、袖口の下側(裏側)では
カフス・ボタンのアシと、
使っていない貝ボタンとが同時にのぞいてしまう。
これはあまり美しいものではありません。
しかも、ふだんは隠れていて見えないものが、
ちょっとした手の動きでそれが一瞬見えてしまう。
ほんの小さなことかも知れませんが、
私にはおしゃれの大問題のように思えるのです。

この問題?を解決する方法として、
貝ボタンを付け替えることも可能です。
一度貝ボタンを外し、もう一度付け直す。
この時、縫糸を少し長くする。
つまり布地とボタンの間隔をやや空けるのですね。
縫糸に余裕があると、ボタン・ホールを利用して、
貝ボタンを裏側に隠しておくことが出来る。
その結果、袖の裏側で、カフス・ボタンと貝ボタンが
同時に並ぶ問題は解決できるわけです。

でも、ここまで苦労して、
わざわざシングルの袖口に
カフス・ボタンをあしらう必要があるでしょうか。
やはり私としては、
カフス・ボタンはダブル・カフスにこそ似合う、
と言いたいのです。
最近では既製品でも
ダブル・カフスのシャツを探すことが可能です。
一度、専門店に相談してみて下さい。
もちろん注文で仕立ててもらう場合には、
まったく問題はありません。

もし、好みのカフス・ボタンが見つからない場合には、
自分で作る方法があります。
しかも実に簡単なのです。
まずボタン専門店に行きましょう。
ここで小さな、立体的な、装飾的なボタンを4個だけ買います。
カフス・ボタンを買うことに較べれば、
はるかに安上がりです。
さて、次にボタンを適度な間隔で2個づつつなげば完成。
たとえば糸やゴムでつなぐ方法もあるでしょう。
もう少し器用な人なら、
小さなクリップを転用しても良いでしょう。
これで本当に裏表のないカフス・ボタンを
飾ることができるのです。


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2003年9月9日(火)

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