服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第351回
ポケッチーフ術

ポケッチーフを使ったことがありますか。
絹の、小さくて正方形の布地。
シルクのハンカチーフで、
主として胸ポケットに飾るところから、
ポケッチーフの名前があります。
「ポケットチーフ」とも言いますが、
私は“ポケッチーフ”と発音するほうが好きです。

ポケッチーフはとくに意識しなくても、
自然にたまってしまうところがあります。
最初からネクタイとセットになっていることもありますよね。
さて、このポケッチーフもよく眺めてみると、
多少サイズに違いがあります。
小型のポケッチーフもあれば
大型のポケッチーフもあるというわけです。

大は小を兼ねると申します。
ポケッチーフについても同じことが言えるでしょう。
ハンカチ同様、大判のほうが使いやすいのです。
単純な話、胸ポケットに差した場合でも、
そのボリューム感を自由に調節できるからです。

ところでポケッチーフはなにも
胸ポケットに入れておくだけのものではありません。
私は時折、これを首に巻くことがあります。
ボロ・シャツやスポーツ・シャツ、
あるいはTシャツの首元でも良いでしょう。
つまりもっとも手軽なスカーフというわけです。
しかも巻き方も簡単。
まず三角形に2つ折りにして、
首の後で結ぶだけ。
その上からシャツなどを着ると、
立派なスカーフに仕上ります。

あるいは対角線の両端を手で持って、軽くしごく。
で、そのまま首の後で結んでみる。
するとまた別のボリューム感が出るはずです。
逆にしっかり長方形に畳んでから、
あしらう方法もあるでしょう。
巻き方はそれぞれの好みで良いのです。

またシャツなどの前ボタンの外し方によっても、
その印象は大きく変ってきます。
ごく一般的には上から1つか2つボタンを外す。
けれどもあえてボタンを外さずに、
襟の上からごくわずかに
スカーフをのぞかせるという方法もあります。
見慣れたスポーツ・シャツが、
意外な新しさを発揮するはずです。
おしゃれとは、自分が持っている素材
上手に活かす術なのです。


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2003年9月18日(木)

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