服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第360回
専任スタイリストをやとう話

おしゃれになるための近道は何だと思いますか。
たぶん専任のスタイリストをつけることでしょう。
私以外のたいていの人は忙しい。
朝から晩までファッションのことばかり
考えているわけにはいかないからです。
でも、この広い世の中には、
寝ても醒めても服とか着こなしとか
流行ばかり考えている男がいるでしょう。
モチはモチ屋と言いますから、
彼らに洋服のいっさいを任せるのが、
てっとばりばやい。

けれども大臣でも役者でも、
あるいはニュース・キャスターでもない身であれば、
そうそう簡単にスタイリストを頼む
というわけにはいきません。
しかしここにひとつの裏道があります。
ブティックの店員を
専任のスタイリストにしてしまう方法です。
まさか?とおっしゃるのですか。
まあ、とりあえず話を聞いて下さい。

近頃ではセレクト・ショップと言うのでしょうか、
まずはお目当ての店をひとつかふたつ絞ります。
で、買うか買わないかはさておくとして、
とにかく足を運ぶ。
そして必ずコレ!と思った特定の店員に話しかける。
最初は立話なり世間話なりでよろしい。
もちろん時にはスェーターを買い、
ジャケットを買うこともあるでしょう。
このような会話のなかで
定員Aはあなたを意識し、趣味を察知し、
財布の厚味を推し量ろうとするでしょう。

半年がたち1年がたつ頃、
A君とはかなり親しくなっていることでしょう。
重ねて申しますが、
買物をすることも大切ですが、
それ以上に足繁く通うことなのです。
親しくなれば気軽に
着こなしについてのアドバイスをしてもらえるでしょう。
極端な話、A君が新しい商品を仕入れる場合、
あなたのことを思い描くかも知れないのです。

なるべく多くの服を見ること、
なるべく多く服に触れ、
話をすることがおしゃれ上手への近道。
結局、A君は実質上のスタイリストとなってくれるでしょう。
そして最後に、多く歩くことは
服が似合う体型を保ってくれるに違いありません。


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2003年9月27日(土)

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