服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第370回
バランスと着こなし

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者のT様から
第365回 2つボタン主義か3つボタン主義か
について以下の感想メールをいただきましたので、
ご返答を掲載させていただきます。


■T様にいただいたメール

毎日HP楽しく拝見しています。
着道楽の私はこのページがとても気に入っています。

さて、私はシングルジャケットは
基本的に2つボタンと決めています。

なぜかといえば、3つボタンは自分には似合わないし、
良いデザインが少ないと思っているからです。
私は身長172cm、体重70Kgですけれど。

また、流行だからと店員さんに勧められ、
子供の七五三のような
バランスの悪い3つボタンを着ている人を見ると
悲しくなってしまうのです。

しかし、こんな頑固な私でも
Vゾーンが広めで全体のバランスがよく見えるデザインの
3つボタンは何着か持っています。
ネクタイをうまく見せることができるというのも
広いVゾーンにこだわる理由です。

楽しいおしゃれ情報を伝えてください。お元気で。


■出石さんからのA(答え)

「2つボタン主義か3つボタン主義か」について
お便りを下さり、ありがとうございます。
また、いつもご愛読下さっていることにつきましても
重ねて御礼を申上げます。

さて、T様のお便りのキー・ワードは
「バランス」であろうと思われます。
常にご自分でもバランスの良い着こなしを
心がけていることが、私にも伝わってきます。

服を上手に着こなす上で
もっとも大切なことは、バランス。
さらに言い換えるならプロポーション
(釣合い)ということでしょうか。
色や柄やデザインなどに較べて、
バランス(プロポーション)ははるかに重要なのです。
そしてT様は3つボタンであっても、
なかにはバランスの良いものがある、
と判断しているようですね。
ということはご自分でしっかりと
バランスを観察する敏い眼を持っているわけです。
結局のところ、おしゃれであるかどうかは、
このバランスを見る眼を持っているかどうかに
かかっているわけです。
つまりT様はすでに充分、
着こなし上手であるということになります。

ところで細かい話をすれば、
おしゃれの世界には「段返り」ということがあります。
これはご存じのように、
3つボタンなのだけれど、
第1ボタンは必ず外し、
しかも大きく折返っていて、
実質上2つボタンに見えてしまうデザインのことです。
これはもう最初からそのように設計されていて、
第1ボタンをあえて留めたりすると、
それこそバランスが崩れてしまいます。
余計なお世話かも知れませんが、
T様の眼に叶うデザインがあるでしょう。

このように考えてくれば、
2つボタンであるか、3つボタンであるかは
決定的な問題ではないのです。
要はバランスが良いかどうかが問題。
だからこそ「主義」を持って着ることが大切だと思うのです。
バランスの良いことが大切だと思うのです。
バランスの良い2つボタンもあれば、
バランスの悪い3ボタンもあるわけですが、
しかも着る側が先に、そう思ってしまえば、
不思議に似合ってしまうものです。
T様、今後ともご愛読お願い致します。


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2003年10月7日(火)

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