服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第402回
ことば、言葉、言葉集め

いちばん最近に観た映画は何ですか。
私はたまたま『イン・ザ・カット』を
試写で観る機会がありました。
ジェーン・カンピオン監督、
メグ・ライアン主演のミステリー映画。
でも、単純にミステリー映画と決めつけられないところに、
『イン・ザ・カット』の深さがあります。
ついでながら“イン・ザ・カット”には
「割れ目」「秘密の部分」「安全な隠れ場所」
などの意味があるとのことです。

メグ・ライアンが演じるのは、
ニューヨークのある大学で
英文学を教える講師、フラニー。
たとえばヴァージニア・ウルフの『灯台へ』などを
題材にとりあげたりする。
そして実際の灯台が事件の重要なカギになったりするのです。

フラニーは大学の講師という立場からも、
言葉に対して強い関心を持っている。
町を歩いていても、電車に乗っていても、
注意をひいた言葉はすぐに書き取る。
ワード・ハンターとでも言えば良いでしょうか。
そればかりでなく、
新しい俗語(スラング)にも興味がある。
若い学生に面接して、
一語一語コレクションをふやしてゆく。
そして言葉たちが事件の進展を暗示させる。
ちょっと恐いけれど、面白い映画です。
もし、ご興味おありの方は、
ホームページ「www.inthecut.jp」をごらんになって下さい。

ひとつの映画を10人が観た場合、
10通りの観方と解釈があるでしょう。
もちろんそれで良いのです。
私は映画を観ることは、
風変りな瞑想でもあると思っています。
ストーリーを追い、それを楽しむのはもちろんですが、
一場面がヒントを与えてくれることもある。
ひとつの場面が連想を生み、
その連想からさらに忘れられていたことを
思い出させてくれたりする。
ちょっと気障な言い方をすれば、
眠れる潜在意識をよびさます。
これも映画の持つひとつの効果でしょう。

単純に影響されやすい私としは、
自分の好きな言葉のコレクションをはじめてみようかと、
今考えているところです。


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