服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第411回
そうか下駄があったか!

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者のJ.K 様から
メールをいただきましたので、
ご返答を掲載させていただきます。


■J.K 様にいただいたメール

前略
いつも楽しく拝見しております。

突然ですが、最近一本歯の高下駄にはまっております。
というのも、バランスのよい立ち姿勢
ひざや腰に負担のかからない、
かつ着物の着崩れしにくい歩き方が身につくというのです。

おしゃれな服がさらに映えるように自分を変えたい、
まずは猫背気味な姿勢を何とかしたいと思ったのが
きっかけだったのですが、
今はただ歩くのが楽しくて、
暇を見つけては散歩に出ています。
経験はありませんが、
竹馬で遊んでいる、といった感じでしょうか。

ただ、周囲の人に奇異の目で見られるので
あまり人目につかないところでよちよち歩きをしております。

http://www.shouseikan.com/news.htm
によると、京王線府中駅南口前にある
大野屋履物店(042-366-5356)
がもっとも良心的な価格にて購入できるそうです。
下駄自体はおしゃれには程遠い代物かもしれませんが
興味がおありでしたら、一度のぞいてみてはいかがでしょうか?

これからのますますのご活躍、ご祈念申し上げますとともに
晩秋の折、くれぐれもお身体、ご自愛下さい。
草々

J.K


■出石さんからのA(答え)

この度はご丁寧にお便り下さり、
ありがとうございます。
またいつもご愛読頂いていることにつきましても
御礼を申上げます。

今でも1本歯の高下駄があるんですね。
私にとっても懐かしいものです。
もともと本来は
下駄の歯は1枚2枚3枚と数えるようです。
下駄はふつう2枚歯ですが、
むかしは3本歯の下駄もあったとのこと。
江戸期の遊女は3枚歯の塗下駄を
素足で履いたと言われています。
一方、1枚歯の高下駄は
むかしの行者が履いたのだそうです。
おそらく身体の平衡感覚を
きたえようとしたのでしょう。
そういえば物語に出てくる天狗も
1枚歯の高下駄を履いていますね。
また身体、いや足腰をきたえる特殊なものとして、
鉄下駄があるのはご存じの通り。

今、私たちが「下駄」と呼んでいるものは
正しくは駒下駄(こまげた)で、
比較的新しいかたちなのです。
それより古いものとしては、
吾妻下駄(あづまげた)というのがあった。
これは足裏があたる部分に
畳表を貼ったものです。
下駄の話をはじめるとキリがありませんね。
最後にひとつだけ、無用の雑学を。
職人の隠語では「三」のことを
「ゲタ」と言ったものです。
これは下駄には必ず3つの穴が
開いているところからきています。

さて、J.Kさんはとても良いことを思いつきましね。
また、単に考えるだけでなく、
実際に実行しているところが立派です。
まず第一にバランス感覚が良くなります。
そしていつも意識していれば、
必ず正しい姿勢を保つはずです。
やや大股で、胸を張って、
まっすぐ前を向いて歩くようにすれば、
まず間違いなく姿勢が伸びるでしょう。
きちんと背筋が伸びると、
より多くの空気をとり入れることにもなり、
良いことばかりです。

ちょっと妙な表現ですが、
心の中で、頭の上に1枚歯の高下駄を
乗せているつもりになって下さい。
この1枚歯で天を突くような気分で歩けば、
良い姿勢になり、何を着ても似合うはずです。
府中の大野履物店、教えて下さりありがとうございます。
今度行ってみます。


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