服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第414回
まるで親友のようなコール天の上着

コール天の上着を着たことがありますか。
コール天はコーデュロイの日本語ですね。
では「天」とは何か。
天鵞絨の「天」なのです。
むかしビロード(ヴェルヴェット)のことを
「天鵞絨」と言った。
では「天鵞」とは何か。
これは想像上の美しい鳥のこと。
まるでこの鳥の羽のように美しい、というので
「天鵞絨」と呼んだのです。
そしてコーデュロイと天鵞絨を組合わせて、
「コール天」の名称が一般化したといいます。

明治時代になってコール天は
意外なところで意外な使われ方をする。
それは人力車の椅子張りとして。
丈夫で、温かく、適度な摩擦が
すべり止めにもなったのでしょう。
また下駄の鼻緒としてもよく使われました。

それはともかく
コーデュロイのジャケットを1着持っていると、
なにかと重宝するものです。
同じコーデュロイでも、
その畝の大きさによって
はっきりと性格が異なってくるのは、ご存じの通りです。
畝が太いほどスポーティーで、
細くなるほどエレガントな印象になります。
極細のピンウェイル・コーデュロイになると、
ほとんどヴェルヴェットのような着こなしが楽しめるでしょう。

私としてはダーク・トーンの細コールが
もっとも応用範囲が広いだろうと考えています。
黒をはじめとして、ダークグレイやダークブルー、
あるいはダーク・ブラウン、ダークグリーンなども良いでしょう。
カジュアル・ウェアとして、旅行用として、
本当に便利に使える上着です。
スポーツ・シャツに合わせる、
タートルネック・スェーターに合わせる、
スカーフの有無なども含めて、
さまざまな着こなしが楽しめるでしょう。
つまり1着の上着で
何通りものコーディネイションが可能なのです。

でも、ひとつだけ欠点があります。
永く着ていると、ケバが倒れて
まるで光っているように見えること。
これは充分スチームで蒸して、
ブラシでケバを起こしてやると、
案外簡単に元通りになるものです。
ぜひコール天の上着を親友にしてみて下さい。


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