服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第432回
スマートな手袋の扱い方

どうして正装の時に手袋が必要か、
知っていますか。
これは昔の騎士の姿と関係があります。
ヨロイとカブトに身を固め、
必ず籠手(こて)をはめた。
つまり現代の手袋は、
かつての籠手の後継者だと考えれば、
分りやすいでしょう。
英語で「手袋を投げる」といえば、
それは「決闘を申込む」という意味になります。
昔の紳士はそうやって決闘を申込む習慣があったからです。
結局のところ手袋を持っていないと、
紳士にはなれないということになります。
今でもモーニング・コートを着ると、
季節に関係なく手袋を持たされるのは、
そのような理由からなのです。

では、どんな手袋が理想とされるのか。
お札を数えてみなさい、と言います。
つまり手袋をはめた手で、
間違いなくお札を数えられるようなら、
良い手袋である、と。
たとえば世間ではペッカリーが上質の手袋である、
と考えられています。
これは伸縮性があって
手によくフィットするからです。
ただし実際の使い方としては
カジュアルな服装に向く手袋で、
正装のときには使いません。
正装にはシャモア(カモシカの皮)キッド(仔山羊の皮)、
ピッグスキンなどの手袋が適しています。
色としては白、淡いグレー、
ファーン(淡いベージュ)など。

手にぴったりと合った、
美しい皮の手袋をはめてみたい。
でも、手袋はわりあい忘れやすいのですね。
昔はたいてい脱いだ手袋は
帽子のヤマのくぼみに入れておいた。
帽子を脱ぐには手袋も脱いだから。
これなら帽子を忘れなければ、
手袋を忘れることもなかったわけです。

では、帽子を被らない時、どうするか。
コートの内ポケットに入れる習慣をつける。
もしコートを着ない時には上着の内ポケットに入れる。
これをひとつの癖にしてしまえば、
手袋を落したり、忘れたりすることは少なくなるでしょう。
もちろん時と場合によって、
コートや上着の胸ポケットを利用して、
まるでポケッチーフのようにあしらう方法もあります。


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