服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第468回
私はベレー帽が好きです

ベレー帽には大きく分けて、
2種類あるのを知っていますか。
ひとつはバスク・ベレーであり、
もうひとつがブレトン・ベレーです。
今、我われが単に「ベレー」と呼ぶのは、
“バスク・ベレー”。
“バスク・ベレー”を省略して、
「ベレー」と理解しているのです。

では、バスク・ベレーとブレトン・ベレーは、
どこがどう違うのか。
まず言葉通りに解釈すると、
「バスク地方のベレー」と
「グルターニュ地方のベレー」ということになります。
言葉に方言があるように、
同じ帽子であっても、
それぞれの地方色があるわけです。
“ブレトン・ベレーは
ゆったりと大きなを持つもので、
俗に「大黒帽」と形容されたりします。
ちょっとスコットランドの
“タモシャンター”にも似た帽子です。
明治のはじめ、画家の黒田清輝が被ったのも、
正しくは“ブレトン・ベレー”でありました。

一方、“バスク・ベレー”は
比較的頭にぴったりとフィットする、
小型のベレーなのです。
かつてチェ・ゲバラが愛用したのも、
スタイル上からは
“バスク・ベレー”と呼ばれるべきでしょう。
今、世界中で漠然と
“ベレー”と呼ばれているものの大半が、
実際には“バスク・ベレー”なのです。
それほど広く愛用されている証拠でもあります。

なにしろ丸いフェルト地ですから、
不要の折には、くるくると巻いて
ポケットに入れておけます。
ポケット代りになったり、
ハンカチ代りになったりもします。
これほど応用範囲の広い帽子は、
ちょっと他にはないでしょう。

さて、ベレーの上手な被り方について。
当り前の話ですが、
まず頭にベレーを載せる。
この時、ベレーの下端のラインをしっかり決めます。
次にベレーのの部分を思いっきり、
左右前後、好みの方向に引張ります。
鏡の前で少し練習をしてみて下さい。
この傾け方が被る人の個性になります。
少なくともベレーは、
形を作りながら被る帽子であることを、
覚えておいて下さい。


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