服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第550回
春スェーターと友達になろう

「スプリング・コート」
という言葉を使ったことがありますか。
春夏秋冬のはっきりとした
日本ならではの表現でしょう。
もちろん純然たる和製英語です。
強いて英語で近いものを探すなら
“トップ・コート”でしょう。
いかにも春にふさわしい、
軽いコートのこと。
でも、もう今では古語に近いのでしょうか。

よろしい、去るものは追わず、
来るものは拒まず。
で、「スプリング・スェーター」
というのはどうでしょう。
こんな言葉はありません。
ふつう“サマー・スェーター”と言いますよね。
たいていはコットンやリネンや、あるいはシルクなどの、
薄手の、爽やかな感触のスェーター。
頭の中ではいつも
「今年はぜひサマー・スェーターを着よう」と思う。
でも、実際に夏になってみると、
暑がりの私、
その気持がどこかに消えてしまうのです。
なんとなく損をしたような感じ。

毎年の反省から、
今こそサマー・スェーターを着ようと思う。
ということはむしろ
“スプリング・スェーター”と考えたほうが、
分りやすいのではないか。

では、結局のところ
スプリング・スェーターとは何か。
私はやはり「春の色」だと思うのです。
オフ・ホワイト、ページュ、淡いイエロー・・・。
パステル・ブルーをはじめとする
パステル調の色も良いでしょう。
男としてはふつうなら抵抗感を感じてしまう。
けれどもスプリング・スェーターなら
無理なく袖を通せる。

これは素材感とも関係があります。
コットンで表現されるパステル・カラーは、
他の素材に較べて、より自然で、
より素朴な色調となるからです。
つまり新しい色と友達になるための
良い機会を作ってくれるのが、
スプリング・スェーターなのです。

ウールのスェーターは家庭洗濯が難しい。
しかしコットンやリネンなら、
それほど難しいことではありません。
淡い色は汚れやすいのですが、
丁寧に洗えばほぼ元通りになってくれるのです。
さあ、スプリング・スェーターと
仲良くなろうではありませんか。


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