服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第553回
塩の大切、塩の助け

塩瀬(しおぜ)という生地があるのを知っていますか。
ただしこれは着物地なのですが。
しっかりとした絹織物で、
表面に美しい横畝があらわれるのが特徴。
たいていは帯地、
あるいは半襟地などに使われます。
「塩瀬御召」「塩瀬羽二重」などとして
使われることもあります。
「塩瀬」はもともと人の名前であった、との説がある。
当時、朝鮮からの渡来人であった、塩瀬九郎右衛門。
この人は千利休が使う
袱紗(ふくさ)などを作ったというのです。
そもそもはお茶席でのふくさに
はじまっているのかも知れません。

塩瀬そのもではありませんが、
塩瀬に似た洋服地は少なくありません。
ひとつだけ例をあげるなら、“レップ”。
レップもまたしっかりと厚地の絹織物で、
よくレジメンタル・ストライプのネクタイが
作られたりします。
これも本来は横畝地なのですが、
バイアス地(斜め地)として裁断されるため、
ネクタイ上に斜めの畝として表われるものです。
手持ちのネクタイを探せば、
必ず1本や2本、
レップの生地が見つかるはずです。

レップのタイであろうとなかろうと、
よく食事中にシミをつけたりするものです。
私なども大好きなネクタイほど、
また一番目立つところにシミを作って
がっかりすることがあります。

もちろん時と場合によりますが、
塩が助けてくれることがあります。
食事中ですから、たぶん近くに塩があるはず。
シミの上から塩をかける。
つまり塩の吸湿性を利用して、
できるだけシミを塩に吸い取らせるわけです。
ナプキンで拭き取るよりも、
はるかに効果的です。
汚れを吸い取らせた塩は、
あとで払い落とせば、まったく問題ありません。
もちろんそれでも多少、シミの跡は残りますが、
軽傷ですみます。
自宅で、ハンカチなどの上に汚れた面をあて、
裏から絞ったタオルで根気良くたたいていると、
かなりきれいになるものです。
タイのシミには塩。
ただし、あくまでも上品に、
優雅に行えるかどうか、それが問題ですが。


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