服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第557回
おしゃれの最短距離

ディジットという単位を知っていますか。
1ディジットは約2cmです。
“ディジット”digitは本来「指」のことで、
中指の横幅を規準にして生まれた単位なのです。
現在の“デジタル”digitalの語源も
実はこの“ディジット”から来ています。

1インチは約2.54cmで、
今でもよく使われる単位です。
これも同じように
親指の横幅を規準にした単位なのです。
また“パルム”palm という単位もあります。
本来は「掌」という意味。
ここから親指を除いた、
4本の指を揃えた横幅のことで、
約8センチということになっています。

さらには1キュービットという単位があります。
1キュービットは約45cm。
“キュービット”cubitの語源は
ラテン語の“クビトゥム”cubitum で、
「肘」の意味。
つまり肘から指先までの長さを単位としたもの。
古代エジプトのピラミッドも
このキュービットを単位として建造されたとのことです。

むかしは生地を測る時、
「ヤール」の単位が使われました。
英語の“ヤード”yard の変化した言葉。
1ヤードは約91cm。
これは古代の英国王の腰周りを
基準とした単位だと言われています。

つまり人間はもともと身体を使って
長さを測る智恵を持っていたわけです。
いちいちモノサシがなくても、
自分の指の幅や長さを知っていれば、
簡単に長さが測ることができます。

たとえばワイシャツを選ぶとしましょう。
襟の長さやカフスの幅、
微妙に自分の好みがあるものです。
もちろん店員にメジャーで
測ってもらう方法もあるでしょう。
でも、自分の指や手を上手に使って、
自分なりに判断を下すことができるはずです。
これはまた、
ワイシャツとより親しくなる方法でもあります。
さらには、慣れてくると、
いちいち測らなくても、
眼でじっと視ただけで、
およその見当がつくようになります。

自分の身体をもとにして、
長さや幅に対する感覚を磨く。
これもおしゃれへの近道なのです。


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