服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第558回
安全ピンでもっとおしゃれになろう

安全ピンを使ったことがありますか。
男性よりも女性のほうが
より身近な小道具であるかも知れません。
でも、男が使ってはいけないということは
もちろんありません。
私もときどき、
必要に応じて使うことがあります。
安くて、単純そのものの小道具ですが、
実に役立つことがあります。

たとえばブレザーのメタル・ボタンが取れた時。
裏から安全ピンを使って留める。
家に帰るまでの間くらいなら、
とりあえず切り抜けることができます。
少なくともボタンが無いよりはましでしょう。
男だって安全ピンをひとつやふたつ、
どこかに入れておいても
けっして邪魔にはならないはずです。

古代ギリシァ時代から
すでに安全ピンがあった、
と言えば驚かれるでしょうか。
でも、これは本当のことです。
現在のものより、やや大型ではありましたが、
原理はほぼ同じ。
彼ら自身は“ペローネ”と呼んでいました。
もちろん金属の弾性を利用しているわけで、
男女の別なく使いました。
当時の服装は主として1枚の布地だったので、
ペローネを使って、肩で留めて着用したのです。
この影響を受けて、
古代ローマにも安全ピンがありました。
“フィブラ”fibula がそれです。
フィブラは単に大形であるのみならず、
装飾的でもあり、
今日のブローチの役割をも果しました。
まあ、それはともかく広い意味での安全ピンは、
ざっと数千年の歴史があるということになります。

ジャケットを羽織って、鏡の前に立つ。
もう少しウエスト・ラインがフィットしていたらなあ、
と思うことがあります。
こんな時には安全ピン2つを使って、
裏側で、1センチづつ詰めてみて下さい。
全体で4センチの調整になるわけで、
かなりシルエットが違ってくるわけです。
1日や2日、これで外を歩いてみて下さい。
これで本当に良し、となれば、
ウエスト部分を専門の人に
修理してもらうことも可能でしょう。

今も昔も安全ピンは緊急用だけでなく、
おしゃれの陰の立役者でもあるのです。


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