服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第567回
懐かしい白ピケのファッション

幼稚園の頃に被った
白い帽子のことを憶えていますか。
小さな、丸い登山帽のようで、
たしか細かいゴムのあごひもが付いていたはずです。
必ずしも白ではなかったかも知れませんが、
私の記憶のなかでは常に白です。
あの白い帽子の生地がピケです。
もちろん木綿ですから、
正しくは“コットン・ピケ”ということになります。

ひと言で説明すれば、
細かいタテ畝織りで、
ふつう夏にふわさしい生地だとされます。
丈夫で張りがあり、吸湿性も高く、
肌ざわりが良いからでしょう。
“ピケ”pique は
フランス語の“ピケ”piquer から来た言葉。
これは「刺子(さしこ)」という意味です。
ピケ地を裏返してみると、
複雑にヨコ糸が走っています。
この様子が刺子にした布を想わせたからでしょうか。
19世紀のはじめ、
フランスで生まれた生地と考えて良いでしょう。

白ピケは実に用途の広い生地です。
古い例をあげれば、正装用のシャツやチョッキは
すべてこの生地で仕立てられたものです。
白ピケのシャツに白ピケの蝶ネクタイ、
白ピケのドレス・ヴェストが
男の夜間正装とされたのです。

もちろんその一方で、
夏のスポーツ・ウェアとしても使われたのです。
スポーツ・シャツや替上着の生地として。
そして今私が穿きたいなあ、と思っているのは
白ピケのパンツ。
さぞかし涼し気で、快適だろうと考えているのです。
純白のコットン・パンツは、
どこか気恥かしい感じがするのですが、
子供の頃からなじんできた白ピケなら
さほど抵抗が少ないのではないでしょうか。

このパンツの上に合わせるものは、
ネイビー・ブルーのサマー・スェーター。
いや、時と場合によっては
ネイビー・ブルーのサマー・ジャケット
ということもあるでしょう。
白ピケの爽やかさと、
紺と白のめりはりの効いた配色が合うと思うからです。
白いスニーカーを履いて、
靴下だけは伝統的に(?)黒無地を合わせてみたい。
いずれにしても、もっと白ピケ地を
身近な存在にしたいものです。


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