服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第602回
着こなしのクリエイション

今、本当に着たいなあ、
と考えている服はどれですか。
突然そう言われても
分らないかも知れませんね。
私自身、ほとんど何も思いつきません。
第一、どこにどんな服があるのかさえ、
よく分っていないのですから。

だからというわけではありませんが、
「おしゃれノート」を作ってみませんか。
思いつくかぎり、手持ちの服を書き出してみるのです。
頭に浮ぶだけで良いのですから、
そう難しいことではありません。
たとえば
「赤と紺のストライプが入った、コットンの半袖シャツ」
という具合で良いのです。

さて「ストライプのシャツ」に何を組合わせるか。
あのパンツ、このパンツ・・・。
あのジャケット、このジャケット・・・。
ああ、あんな服もあったなあ、
と忘れていたものまで思い出すかも知れません。
つまりおしゃれのイメージ・トレーニングができるわけです。

たぶんこのイメージ・トレーニングで気づくのは、
いつも同じような服を、
同じような組合わせで着ているのではないか、
ということでしょう。
人は誰も、自分で思っている以上に
おしゃれに対して保守的なのです。

「ストライプのシャツ」に、
サマー・ウールの、
ビジネス用のパンツを合わせてみる。
まだ一度もやったことのない着こなし。
どうもしっくりと来ない。
でも、何度も何度もイメージ・トレーニングをした後なら、
これが意外に似合ってくれるのです。
イメージ・トレーニングには、
そんな効果もあるでしょう。

「おしゃれ」とはいったい何でしょう。
それは良質の、数少ない服を
数多くの組合わせで愉しむこと、
ではないでしょうか。
これは自分自身の反省をこめて言うのですが、
おしゃれをするのに数多くの服は必要ありません。
どうせ忘れて、仕舞い込んでしまうのですから。
それよりももっと大切なことは、自由な発想です。
おしゃれとは
着こなしの創造にほかならないのですから。

以上のことを裏返すなら、
数少ない服で良いのなら、
上質の服だけで揃えられる、
ということにもなるのですが。


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