服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第603回
アイリッシュ・ポプリン再考

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
「第580回 夏のネクタイを考える」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ shigeo kakudou 様にいただいたメール

【質問】夏用ビジネスタイの考察

出石先生へ。

毎回楽しく拝見させて頂いております。
さらに以前、
度重なる私の質問に御丁寧にお答え頂きまして、
誠にありがとうございました。

今回は先日掲載の
第580回 夏のネクタイを考える を
拝見させて頂いて感化され、
2つ質問させて頂こうとメールさせて頂いた次第です。

本コラムにて、
フラールというタイがあることを初めて知りました。
ここでまず1つ目の質問ですが、
これはビジネスシーンでの着用も可能でしょうか?

一方、
私は今まで夏用のネクタイとして、
アイリッシュポプリン(50%silk 50%wool)のタイを
愛用してきました。
そこで2つ目の質問ですが、
このポプリン素材も
ビジネスシーンで用いても差し支えないのでしょうか?

現代でのネクタイの着用頻度は
圧倒的にビジネスシーンに偏っていると思い、
上記質問をさせて頂いた次第です。
御返事頂ければ幸いでございます。


■出石さんからのA(答え)

いつもお目通し下さり、
ありがとうございます。
また、お便りを頂きましたことにつきましても、
御礼を申上げます。

さて、フラードのネクタイですが、
もちろんビジネス・ウェアに結ぶことができます。
ご存じのように、柔かく、優雅な印象のシルク地ですが、
オフィスであっても
まったく違和感はありません。

ビジネスに向くかどうか。
これはむしろ素材感よりも、
色や柄によって左右されるのではないでしょうか。
同じフラードでも、
ワイン・カラーとパステル・ブルーとでは、
おのずと違ってくると思います。

別言するなら、色柄での選択とは
主として用途の意識であり、
素材感での選択は個人の趣味の問題なのです。
そして一般的には色柄を中心にして選ぶことが多いので、
素材感での選択は、
より深いおしゃれ心と言って良いでしょう。

アイリッシュ・ポプリンについても同様です。
ただし圧倒的にレジメンタル・ストライプが多いので、
その意味ではビジネス用にふさわしいかも知れません。

正しくは「ロイヤル・アイリッシュ・ポプリン」。
一般名称ではなく、
リチャード・アトキンソンズ社の固有名詞なのです。
これは北アイルランド、ベルファーストで、
1820年にリチャード・アトキンソンがはじめた
織物工場なのです。
言うまでもなく、絹と毛の交織地で、
当初英国王室でも用いられたところから、
その名前があります。
一説にヴィクトリア女王の服装にも
使われたとのことです。

経糸(たていと)に絹、
緯糸(よこいと)に極細の
ウーステッド糸を使って織上げることで、
ネクタイ地になによりも必要な
ハリが生まれるのです。
また、結んだ後の安定感と復原力も強い。
一般的に経糸のほうが若干多くなるので、
必ずしも50%対50%になるわけではありません。
アトキンソンズではごく一部、
ストライプ以外のネクタイを使っていて、
これもまた面白い味わいのものです。


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