服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第604回
この美しいひと言なんです

出版記念会に出席したことがありますか。
なにか本を出版する。
これを「上梓(じょうし)」と言いますね。
むかしは梓(あずさ)の木を
版木に使って印刷をしたからです。
もちろん梓(あずさ)は版木だけでなく、
弓を作ることもありました。梓弓。
そこで「梓」というと
「弓」を意味することもあります。

無用の雑学はさておき、出版記念会。
B氏の出版記念会のお報らせが
A氏から届きました。
もう少しわかりやすく説明しましょう。
B氏が近著を出版された。
それで出版記念会のお報らせを頂いた。
ただ私としてはB氏は存じあげない方なのです。
でも、世の中には珍しいことではありません。
そんな話について、
私がここでお話しようとは思いません。

珍しいのは、そのご案内が
A氏から届いたことなのです。
A氏はよく存じあげてる方で、
立派な人物であります。
封筒のなかに一筆したためてあって、
B氏の案内をなぜA氏が出したかについて
説明があります。―
なるほど、こんな方法があったかと、
すっかり感激してしまいました。
手短に申しますと、
A氏はB氏の応援をしているわけです。
しかも、会費のところを訂正してあって、
「ご招待」となっているのです。
これまた丁寧なことだと、感激してしまったのです。
もちろん、断然、出席させて頂きたくなってしまいました。
「会場でお目にかかれますこと楽しみです」
と文末にあります。

このひと言なんですね、
人を動かすということは。
世の中は私たちが考えているほど
複雑ではないのかも知れません。
心からのひと言が添えられるかどうかで、
決定されることが少なくないのです。
とにかく私は出席することになりました。

そしてまた、
A氏のお手伝いの気持自体が美しい。
誰かのために、自分が応援してあげられるのなら、
喜んでやりましょうというわけです。
私も少しはA氏を見習おうと思いました。
こんなふうにして、
美しいことは次から次へと伝えられてゆくのです。


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