服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第617回
せんべいから香りの世界へ

銀座に「松崎煎餅」という店があるのを知っていますか。
銀座4丁目の交差点をしらばく
数奇屋橋方面に歩いて、
並木通りを右に折れた右側にあります。
銀座でゆっくりお茶を飲みながら
和菓子を食べようと思ったら、この店ですね。
煎茶にするか抹茶にするかは、
その時の気分で選べます。
むかしは1階の奥が茶室で、
大きなテーブルで何杯もお茶を飲んだものです。
今は喫茶は2階で、
モダンでハイカラな店になっています。
松崎は古い店で、
慶応元年の創業だと聞いたことがあります。
慶応元年といえば1865年で、
高杉晋作が山口は下関で兵を挙げた時代です。

この松崎煎餅(TEL:3561-9811)で
ふと見つけたのが「茶香炉」。
値段は2,100円なり。
ごく簡単に説明すれば、素焼きの筒の上に
中央が大きく凹んだ皿を載せたようなかたち。
この下の筒の部分に小さなロウソクを置く。
で、上の皿には茶の葉を入れるところから、
「茶香炉」。
茶葉は下のロウソクの火で温められ、
そこはかとなく佳い香りが漂いはじめる、
という仕掛けなのです。
私は柄に似合わずお香が大好きなので、
すぐ目に入ってしまったのです。
お香は香水に似て、上物ほど佳い香りがする。
まあ、当り前の話なのですが。
つまりどの程度のお香にするのか、
これはなかなか難しい問題なのです。

けれども茶香炉なら、
茶の、ごく自然な香りですから、
その程度の良し悪しについて
悩まなくてもすみます。
少なくともお茶の、ほど良い香りは、
まず嫌いという人はいないでしょう。

ところでこの茶香炉に使った葉は、
後でお茶に使えるのかどうか、
暇人には新しい悩みがふえてしまいました。
さらには、お茶が使えるのなら、
紅茶の葉はどうだろう。
中国茶はどうだろう。
いや、コーヒー豆の粉という手もあるのではないか。
暇人の空想は尽きないのです。
おしゃれとは、
自分自身をどのような環境に置くのか、
という問題でもあります。
静かな優雅な空気を創ろうではありませんか。


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