服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第640回
万年筆で子供になろう

ペリカン万年筆を使ったことがありますか。
ペリカンといえば万年筆、
それもグリーン・ストライプの軸を
思い浮べるかも知れません。
でも、そもそもは絵の具と
インクのメーカーだったそうです。
そして今では総合文具メーカーとして、
ヨーロッパを代表する存在だということです。

むかし夏目漱石が
ペリカン万年筆を使った、
という話があります。
でも、これはペリカン違い。
オノトを出していたメーカーの
別銘柄であるペリカンのほう。
これは現在は存在しません。

では、なぜペリカンなのか。
万年筆がインクを扱う姿と、
ペリカンが水を飲む様子が似ているから。
あるいはペリカンは
母性愛の象徴などと言われたりします。
けれども現在の西ドイツのペリカン万年筆は単純明快。
1863年以降、実質的経営者となった
ギュンター・ワグナー家の紋章が
ペリカンであったからです。
ついでながら創業は1832年、
正式に商標となったのは、
1878年以降のことです。

つい長々とペリカン万年筆について
話してしまいました。
それというのも今、私、
「ペリカーノ・ジュニア」を愛用しているからです。
ひと言で表現するなら「子供用ペリカン」。
しかし試しに書いてみると、
とても1,260円とは思えない感触なのです。
「ペリカーノ・ジュニア」は
銀座の伊東屋(TEL:3561-8311)で売っています。

どうもこれはペリカンが
学童用にと採算を度外視して売出したもののようです。
子供の頃から万年筆に親しんでいれば、
きっと大人になってからも使ってくれるだろう、と。
世に「損して得とれ」と申しますが、
より良い企業の姿勢は、
このような長期展望がなくてはいけませんね。

私としてはせっせと
「ペリカーノ・ジュニア」を使いながら、
お子様にかえったつもりになっているところです。
ずっとこれを使っていると
たぶん若返るのではないでしょうか。


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