服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第650回
純白のおしゃれ

秋になったら着てみたい服、
なにかありますか。
私もあります。
つらつらと思い返してみるに、
夏の間ずっとTシャツと
コットン・パンツばかり着ていたような気がします。
暑いからという理由で、
おしゃれをサボっていたのでしょう。
なんだか自分で、自分が恥しい。

なにごとも反動ということがあります。
引き潮の次は必ず満ち潮であるように。
たぶん秋の私は今よりも
ずっとおしゃれをしているでしょう。
さて、秋になったらまず穿きたいものは、
ホワイト・フランネルズ。
そうです、白いフラノ地のパンツ。
1920年代にはずいぶんと流行ったものだそうです。
それ以降も、男がおしゃれをしようという時の、
力強い味方になってくれたキィ・ワード。
ホワイト・フランネルズをお忘れなく。
むかしはスポーツ用、
盛夏用でもあったのでしょうが、
今の時代なら秋にこそふさわしいと思います。

白であろうとなかろうと、
フラノはしっかりと緻密な質感で、
指で触ると
奥からはね返してくるような強さを持っているものが、
上質なのです。
少し乱暴な言い方をすれば、
厚地であればあるほど良い。
私が思い描くシルエットは、
全体的に直線的で、やや股上深く、
適度にゆとりがあるもの。
つまりクラシックなイメージ。
裾口にはちゃんと折返しもつけて、
ウエストには内ひだを2本あしらってみたい。
できることならノオ・ベルト式で、
左右の尾錠で調節して穿くスタイル。
つまりベルトもサスペンダーもなんにもなし。

ホワイト・フランネルズとくれば、
その足もとはホワイト・バックス。
白いスウェード仕上げの、紐結び式の靴。
むかしはバック(雄鹿)の革で作られたところから、
その名前があります。
ホワイト・フランネルズにホワイト・バックスがあれば、
もう無敵でしょう。
つまりその上にどんな服装がきても、大丈夫。―
こんな風な想像を楽しむのも、
おしゃれ上手になるヒント。
要するにイメージ・トレーニング。
それにしてもはやく本格的な秋に来てもらいたい。


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