服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第681
紳士の象徴 カフ・リンクス

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
清家 優 様から
「カフス」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ 清家 優 様にいただいたメール

件名:愛読しております。カフスについて

いつもハイハイQさんの「男はカッコ」を愛読しています。

最近の記事が私の住むロンドンで
最近いいなっと思ったものが立て続いたため、
意を決してメールすることとしました。

ロンドンでは、(ヨーロッパ全体にですが)
黒のスーツ・ジャケットが多くこれがなかなかお洒落。
特に女性が黒のタイトなジェケットに
パンツ・スカート・ジーンズと合わせるのは
なかなか魅力的で
男として真似しようと思っていたところです。

また、黒のスーツもイギリス人はよく着ており、
プレーン・ピンストライプペンシルストライプと
なかなか粋だなぁといつも思っています。

そして、スーツにノーネクタイ。
フランス人がこの格好がとっても上手で
スカーフを巻いたりしています。
イギリスではスカーフは見かけません。
逆にボタンを上からふたつ空けて、ちょっと胸を見せる。
これがなかなかセクシーでいいのです。
スーツにタイがないと
何だか三角ゾーンが寂しいのですが、
ここにシャツと色の違う自分の胸元を見せることにより、
いいアクセントとなります。

ところで、ロンドンではカフスをしている男性が非常に多く、
カフス専門のブランドもあるのですが、
どうもヨーロッパでも他の国ではあまり見かけません。
男がビジネスの場でもジュエリーを付けられる
数少ない場所と思うのですが、
専門の方から見たらカフスの位置付けはどうなのでしょう?

これからも、お洒落な話と期待しております。

清家 優


■出石さんからのA(答え)

ロンドン情報をお送り下さり、ありがとうございます。
また、日頃からお目通し下さっていることにも、
深く御礼を申し上げます。

そもそも“カフ・リンクス”
Cuff linksという言葉ですが、
1788年頃から使われています。
相当に古い歴史があるわけですね。
しかもそれ以前には“スリーヴ・ボタン”と呼んだそうです。
これは1684年にはすでに登場しているとのこと。
では、さらにもっと前には。
17世紀中葉以前の男のシャツは袖口を紐で結んだ。
だからカフス・ボタンの類いはまったくなかったのです。
袖口をいちいち人に頼んで、
結んだり解いたりしてもらうのは面倒なので、
装飾的なボタンが登場したのです。
一方、現代の“カフ・ボタン”は
主としてスポーツ用、労働着であった。
つまり紳士が着るシャツには
やはり“カフ・リンクス”がふさわしいということになります。

ゴールド、シルヴァー、宝石入り、七宝飾り・・・。
カフ・リンクスには
実に様ざまな種類があって迷ってしまいます。
ただひとつ言えることは、
クリップ式(バネ式)は略式だとされます。
理想の、本式のカフ・リンクスは、
表裏一体のデザインになっているものです。
もっとも手頃なものでは“シルク・ノット”と呼ばれる、
紐結びで小さな玉飾りに仕上げたカフ・リンクスでしょう。
あるいは小型のメタル・ボタンを鎖でつないだものも
その一例でしょう。

表裏一体型カフ・リンクスとなると、
ボタン穴との関係で、
どうしても小型のものが中心になります。
それがまた上品で、シックなのですが。
あるいはどうしても気に入ったカフ・リンクスがある場合には、
それに合わせた
ボタン・ホールを作ってもらう方法もあるでしょう。
一度、カフ・リンクスの着こなしを知ると、
次から次へと好みのデザインが欲しくなるものです。

それはともかく、
男の服装のなかでカフ・リンクスほど、
単純明快に「紳士」であることを表明する手段は
他には考えられません。


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