服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第710回
勇者のしるし タータン・トラウザ―ズ

タータン柄のパンツを穿いたことがありますか。―
自分で言っておきながら、
どうもしっくりと来ない。
“タータン”tartanは
かなり古くからあるスコットランドの言葉で、
“パンツ”pantsは
比較的新しいアメリカ語法だからかも知れません。
ここは「タータンのトラウザーズ」と
言い換えるべきでしょう。

パンツであろうとトラウザーズであろうと、
そんなものを穿くのは気恥しい、
と言うかも知れません。
たとえば紺の地に、
赤や黄の大胆な格子柄のトラウザーズ。
たしかに派手にも見えるでしょうが、
そもそもは軍服にはじまっているのです。
スコティッシュ・ハイランド・レジメント。
要するにスコットランド出身者たちで一連隊を組織して、
それを誇らしく示すための
ユニフォームであったのです。

ただし古き良き時代のスコットランドでは皆、
キルト(スカート状の衣裳)が常識であった。
けれどもキルトをそのまま軍装にするのは
なにかと具合が悪い、と英国人は思ったのでしょう。
よく知られているように、
キルトは下着なしで穿くのが習慣でもあり、
勇猛のしるしでもあったから。
もっとも彼ら自身は
スポーランという名の革袋を前に吊すことによって、
具合の悪さを巧みに防衛もしたのですが。

余談はさておき、
スコットランド兵は
俗に“キルティ”kiltyと呼ばれて、
逞しい戦士の別名でもあったのです。
つまりトラウザーズになってからも、
それは勇敢であることの証明だったのです。
少しは穿いてみよう、という気持になりましたか。

さて、ここで絶対に、
誰でも完璧に着こなせる方法を。
まずタータン柄の基本色をよく見て下さい。
で、その色と
ほぼ同じ色の無地の上着(またはブレザー)を
合わせて下さい。
次のアクセント・カラーにも注目。
もしグリーンであったなら、
同色のタートル・ネック・スェーターを着る。
さらに赤や黄があったなら、
黒い靴に合わせるソックスの色に採り入れる。
もしこれで似合わないというなら、
私が責任をとりましょう。


←前回記事へ

2004年11月16日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ