服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第712回
不思議の国の食前酒

ベルモットを飲んだことがありますか。
いや、この問いはちょっとヘンかも知れません。
一応ベルモットは用意してあるけれど、
それを単独で飲むことは割合少ないからです。
もちろん私もそのひとりです。
代表的なカクテルである
ドライ・マティーニをつくるのに
欠かせないからでしょう。

もちろんベルモットで有名なのは、チンザノ。
イタリアはトリノ、ペチェット村で
1757年に考案されたといいますから、古い。
薬草の一種、ニガヨモギのエキスを白ワインに加えて、
ベルモットが誕生した。
つまりもとを正せば白ワインなんですね。

ひと口にベルモットと言っても
いくつかの種類があるのはご存じの通り。
ビアンコ、ロッソ、ドライ・・・。
これはまあ好みの問題でしょう。
けれどもこれに加えて
エキストラ・ドライがあって、
私はこれが好き。
ちょっと楕円形のような
ボトルのデザインも気に入っています。

毎晩のように食前酒に
ドライ・マティーニを作っては、
「ちょっとヤワだなあ」などと、
勝手につぶやいたりしています。
なに、味がそれほど分るわけではないのですが。
ただし、何十回、何百回作っても
けっして同じ味に仕上がらないことだけはたしかです。

ある時、ふっと思いついたことがあります。
ベルモットのストレイトを食前酒にしたら、どうか。
やってみるとこれが悪くないんですね。
もともと美味のストライク・ゾーンが広いほうですから。
生のベルモットを飲んでいて、
また名案が浮かんだ。

シェイカーに氷を入れ、
生のベルモットを注ぎ、シェイクする。
カクテル・グラスに注ぐ。
つまりですね、マティーニを作る時と
まったく同じ手順をふんではどうか、と考えたのです。
やってみました。
薬のほうでプラシーボ(偽薬)ということを言いますよね。
あれに似ているのかどうか、
最高に軽いマティーニであるような気持になれるのです。
わがオリジナル・カクテルに
「ドライ・マネーティー」の名前をつけようかどうか
迷っているところです。


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2004年11月18日(木)

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