服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第716回
フォーマル・ウェアと鞄の関係

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
S・A様から
「礼装とかばん」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ S・A 様にいただいたメール

件名:礼装とかばんについて

出石先生
いつも楽しみに先生のページを
拝見させていただいております。
大阪府在住のS・Aと申します。
先生のページを拝見しては、
いろいろと自分なりにためさせていただいております。
ただ、単なるサルまねになってしまっていないか
非常に心配ですが。

さて、今回メールを差し上げましたのは、
先生にご教示いただきたいことがあるためです。
それは、先日友人の結婚式に
出席した時に感じたことなのですが、
日本の結婚式などでは
お祝いの金封を持参することが普通ですが、
ディレクターズスーツやダークスーツ姿に
いわゆるセカンドバッグというのは
あまり見た目がスマートでないなということです。

特にダークスーツにルイ・ヴィトンという取り合わせは
なにやら借金の取立てのような感覚を覚えてしまうのは
気のせいでしょうか。
こういった情況において、
先生は普段どのような鞄を使われていますか?
それとも鞄をお使いでないのでしょうか?
もしお勧めの色やデザインもしくは種類がありましたら
お教えいただきたいと思います。
突然のメールで非常にぶしつけなお願いではありますが、
もし、よろしければ邱先生のページでご教示賜ると幸いです。


■出石さんからのA(答え)

お頼りを下さり、ありがとうございます。
また日頃からお目通し頂いているご様子にも、
重ねて御礼を申上げます。

さて、結婚式でのセカンド・バッグをどう考えるか。
なかなか難しい問題だと思います。
私の場合を思い返してみると、
鞄ではなく風呂敷。
小さな、紫色の、ちりめんの風呂敷。
いや、ほとんど伏紗(ふくさ)にも近いものです。
財布をはじめとする必要最低限のものは
服のポケットに入れ、あとは伏紗を使う。
使った後の伏紗は畳んで内ポケットに入れておく。

S・A様の場合には、おそらく伏紗ではなく
セカンド・バックならどうするか、
ということなのでしょう。
もちろんそのような選択もあると思います。

問題点は、鞄をどこに置くか。
伏紗のように畳めませんからね。
可能性としては椅子の後でしょう。
背もたれに添って置き、
その鞄を押しつけるように座る。
これなら両手が自由に使えますし、
人目も気にならず、安定感もあります。

ということは、
自分の背と背もたれとの間に置きやすい鞄
ということになるでしょう。
それは薄型で、小型で、シンプルなデザインのもの、
というのが条件でしょう。
色はもちろん黒。
これは全体の服装を考えれば、
ごく当然の選択だと思います。
つまり大きな分け方をすれば、
クラッチ・バックということになるでしょう。
ふだんは腕にかかえて持つ鞄。
それも薄くて、軽いものが良いわけですから、
堅く、厚い皮ではなく、
薄く、柔らかい革のものを選ぶべきだと思います。

あるいはもうひとつの方法として、
通常のショルダー・バッグなどを利用する。
祝儀袋もこのなかに入れておく。
で、会場に着いてから、クロークなどに鞄を預け、
祝儀袋だけを手で持って、受付で手渡す。

いずれにしてもフォーマル・ウェアの場合には、
全体の服装のなかで鞄だけが目立ってしまうのは、
失格でしょう。
可能なかぎり鞄を持たない工夫をするのが、
おしゃれというものです。


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