服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第721回
雨にこそ楽しい靴を

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
スーツに馴染む雨天時の靴について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ shigeo kakudou 様にいただいたメール

出石先生へ。

いつも楽しくコラムを拝見させて頂いております。
以前より私の質問をコラムに取り上げて頂きまして、
誠にありがとうございます。
さて今回は靴について御質問させて頂きます。
それは雨や雪の日にスーツに似合う靴についてであります。

私は日頃晴天時は
黒色のプレーントウやストレートチップといった
オーソドックスなデザインの
合成皮革底の革靴を愛用しております。
が、雨や雪の日には
朝自宅から会社に出社した時点ですでに、
靴底から染み込んだ水が靴下を濡らしてしまっている
といったありさまで、
その日一日は非常に不快な思いを致します。
現在その対策として、
靴下のように靴に履かせて用いるゴム製の
オーバーシューズなるものを使用致しておりますが、
重いのと靴全体が蒸れるので
私はあまり好きではありません。

そこで先生に質問です。
スーツにぴったりのデザインで、
雨や雪の日を快適に過ごせる靴。
お勧めのものがございましたらお教えください。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また、日頃からお目通し下さっていることにも、
重ねて御礼を申上げます。

たしかに雨降りの日の足もとには苦労します。
スポーティーな服装ならまだしも、
スーツにネクタイ姿で
まさかゴム靴というわけにもいきませんからね。

かつての英国人などは
ゴム製のカバーを付けたものです。
通常の靴の上にもう一枚履かせるわけです。
“ギャロッシュ”の名前がありました。
でも、shigeo kakudou様のご指摘のように
蒸れるのが欠点。
湿度の高い日本では
なかなか難しいかも知れません。

また合成皮革の靴にも
似たような難点があります。
靴底からもアッパーからも
呼吸ができない状態となるからです。
つまり防水性があればそれで良い、
という問題でもないのです。

雨の日にむかしから私が愛用しているのは、
「丸善」のオリジナル・シューズです。
昭和30年頃から作っているのだそうで、
ガッチリとして、無骨なほどの表情をしています。
その頃、日本のマナスル登山隊のために
作ったのがはじまりだと、聞いたことがあります。
それで以前は「マナスル・シューズ」の名前がありました。
が、今は「ラギッド・シューズ」と呼んでいるようです。
ゴム製のラギッド・ソールが付いているからです。

もともとは登山靴であったのですが、
デザインそのものは黒のプレーン・トゥで、紐結び、
当然、スーツに合わせても違和感がありません。
もちろん撥水加工を施した革靴で、
水は入ってきません。
なによりの特徴はコバで、
ここが二重になっているのです。
ラギッド・ソールは
雪道でも比較的滑りにくいので安心でしょう。

重厚といえば重厚、
クラシックといえばクラシックですが、
私の好きな靴のひとつです。
黒のプレーン・トゥーは23,000円で、
日本橋「丸善」(TEL 3273-3316)に置いてあります。


←前回記事へ 2004年12月1日(水) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ