服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第753回
ブレザーは永遠のカジュアル・スタイルです

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
「時代遅れの「一生モノ」の活用術」と題して
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ shigeo kakudou 様にいただいたメール

件名:時代遅れの「一生モノ」の活用術

いつも楽しくコラムを拝見させて頂いております。
以前より私の質問をコラムに取り上げて頂きまして、
誠にありがとうございます。
今回もあつかましく御質問させて頂きます。
それは「一生モノ」と信じて20年程前に買った
洋服の活用方法についてであります。

私はもともとあまり目立たない
ベーシックな服装が好みであるため、
その素材や形についてはオーソドックスなものを集め、
長年愛用するといったスタイルを通しております。
例えば20年程前に買った紺色のブレザーは
金ボタンを黒っぽい練りボタンに変えて
今も私のマストアイテム
(ちょっと表現が古いですか?
 今はヘビーローテーションとでも言うんでしょうか?)
となっております。
似たような商品を銀座や青山のとある
流行発信店で目にするたびに、
「あの時、買っておいてよかった」と
うれしく思うのであります。
しかしどんなにベーシックといわれるモノであっても
それ自体時代と共に微妙に変化しているというのが
実のところではないでしょうか。
このブレザーもあと何年着られるか、
今もって実験中なのであります。

さて、私はこのほかに同じく20年程前、
同じく「一生モノ」と信じて大枚はたいて買った
ダークブラウン表皮のMA1タイプの革ジャンを持っております。
これはその当時、「これぞ基本中の基本」
と言われたモノなのですが、
形といい色といい素材感といい、
どうも今の時代の服装にうまくマッチしません。
今となっては「あの時、買わなきゃよかった」と
後悔bPマストアイテムになり下がっております。
着こなしが下手だと言われればそれまでですが、
着ている本人の加齢による影響もあるのでしょうか?
しかしモノ自体はしっかりしていて
まだまだ着られるものですので、
何とか活用したいと考えております。

そこで先生に質問ですが、
時代遅れの「一生モノ」をうまく着こなすコツ。
ぜひとも御教授戴けないでしょうか?


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にお便りを下さり、
ありがとうございます。
また、日頃お目通し下さっていることにも、
重ねて御礼を申上げます。

約20年前のネイビー・ブレザー、
今も愛用されているとは驚きです。
そしてこれこそが本当のおしゃれ心だと思います。
上質のフラノ地であれば
親から子、子から孫へ伝えられるほどのものです。
どうか大切にして下さい。
ここで感謝すべきは、
ほとんど体型が変化していないことです。
ご本人の自覚もあるのでしょうが、
親からの遺産でもあるからです。

着こなせるか、着こなせないか。
これは99%着る側のなかにあります。
体型の大きな変化もそのひとつでしょう。
ファッション以前に、
物理的に着られないのでは、
お話になりません。

そしてもうひとつは、着るという自覚です。
着こなしてやろうという積極的な思いがあるか、ないか。
もう古くさいだろうか、野暮ったいだろうか、
とまわりの目を意識することは、
その段階で心が負けているんです。
これではどうしても
似合って見えるはずがありません。

<流行しているものとは私の着ているものであり、
 流行遅れとは他人の着ているものである>
というオスカー・ワイルドの言葉をもう一度、
思い出して下さい。

ネイビー・ブレザーに
年期の入ったブルー・ジーンズはよく合います。
黒いスリップ・オン・シューズに
タートル・ネックのスェーター。
ジャケットとパンツがほぼ同系色ですから、
スェーターやシャツの色は
多少の冒険が楽しめます。
ワイン・カラーやゴールド系のスェーターを組合わせる。
この時、靴下の色も揃えてみる。
永遠のカジュアル・ウェアといって良いでしょう。

もしメタル・ボタンに抵抗があるなら、
同じ紺色のボタンという手もあります。
たとえばピーコートに付いているような
錨を浮彫りにしたような、
小型のボタンを探すのも
ひとつのアイディアです。


←前回記事へ 2005年1月20日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ