服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第792回
ジンガロに教えてもらったこと

ジンガロを知っていますか。
人馬一体の芸術とでも言えば良いでしょうか。
“ジンガロ”zingaro
もともとの意味は「ジプシー」です。
が、ここでは人馬芸術団を意味する固有名詞。
その本拠地はフランス、パリ郊外の、
オーヴェヴィリエにあります。
主催者は、パルタバスという人物で、日本初公演。

人馬一体というと、
ついサーカスを思い浮かべるかも知れません。
でも、サーカスとは似て非なるものです。
約1時間半の公演ですが、
それはひとつの詩の世界であり、
動く彫刻美でもあります。

今回のテーマは「ルンタ」で、
「風の馬」を意味するチベット語なのだそうです。
ここからも想像できるように、
チベットの人たちの祈りがヒントになっています。
というよりも背景は
チベットの宗教音楽が使われているのです。
しかもその演奏者は、本当のチベット僧とのこと。
人と国とは違っていても、
その敬虔(けいけん)な美しさは伝わってきます。

まず最初に驚かされることは、
馬が芸術を表現することです。
馬が語り、馬が祈り、馬が詩をあらわす。
幻想美というほかありません。
少なくともジンガロの馬には
不可能がないように思われてきます。

ジンガロの団員は約50人で、
ざっと30頭の馬と一緒に
共同生活を送っているのだそうです。
この共同生活のなかで、
ともに練習に練習を重ねて、
ひとつの芸術をつくりあげてゆく。
そこで大切なことは、人と馬との間での信頼と教育。
馬が本当に人を信頼しなくては、
馬に芸術を伝えることができない。
逆に馬がその人物を信頼したなら、
ほとんどのことを伝えることができる。―

これは実は人と人とについても、
同じことが言えるのではないでしょうか。
たとえば子供を教育する、生徒を教育する。
教育は大事なことですが、
それはおたがいの間に
信頼があってのことなのでしょう。

はじめてジンガロ公演を観て、
私はそんなことを教えてもらいました。
シンガロ日本公演については、
事務局(TEL:3233-1979)で
情報を得ることができます。


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