服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第793回
おしゃれなおしゃれな万年筆

サミュエル・ピープスを知っていますか。
むかしのイギリス海軍大臣の名前です。
サミュエル・ピープス
Samuel Pepys(1633〜1703)。
今からざっと300年ほど前の政治家ですから、
それだけならもう忘れられていたかも知れません。
けれどもピープスは
日記を書いたことで有名な人物なのです。

1660年の1月1日から1669年5月31日まで、
克明な、ときには赤裸々な内容の日記。
そのためもあってか、
日記は速記風の暗号で記されていて、
1825年までは解読されることがありませんでした。
今は『ピープスの日記』として刊行されていて、
誰もが読むことができます。

この『ピープスの日記』に
万年筆の話が出てくるのです。
もっとも“ファウンテンペン”(万年筆)の言葉は
まだありませんから、
“シルヴァー・リザヴォア・ペン”とあります。
これは1663年8月に、
ウィリアム・コヴェントリィという人物から
贈られたのだそうです。
「必需品」とありますから、
実際に使ってみたのでしょう。
おそらく軸の部分にインクを貯めておく式の
筆記具であったものと思われます。
もしこれも万年筆の一種だと考えるなら、
その歴史はかなり古いということになります。

ところで最新の万年筆について。
それはドイツのファーバーカステルが発表した
「ガルーシャ万年筆」。
これは2005年の1年間のみに限って生産される
万年筆なのです。
“ガルーシャ”galuchat とは
エイの肌を使ったレザーのことであるらしい。
そのガルーシャの模様が美しい。
ただし1本、315,000円という値段には
頭を抱えたくなりますが。

色はオリーブ系とグレー系の2種があって、
私ならグレー系が欲しい。
それというのも
スプリング内蔵式のクリップになっていて、
どんなポケットに差しておいても
けっして布地を傷つけることがないからです。
3月22日から27日までの間、
「三越」でその現物を見ることも、
予約注文することもできるとのことです。


←前回記事へ 2005年3月17日(木) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ