服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第801回
帽子専用ブラシ発見

ハット・ブラシを知っていますか。
帽子専用のブラシのことです。
帽子専門店には必ず1本置いてあります。
全体に細長い、柄の付いたブラシで、
やや「?」形に湾曲しているのが特徴。
このゆるやかな右カーブが、
帽子のかたちにぴったりと合ってくれるのです。
帽子のなかでもっともほこりの溜りやすい、
クラウン(ヤマ)とブリム(ツバ)の間に、
いともたやすくフィットしてくれる。
だからこそのハット・ブラシなのでしょう。

実は私、このハット・ブラシを持っていません。
時折、帽子屋へ行ってブラシをかけてもらう。
あるいは洋服ブラシを使って、
なんとか誤魔化してしまう。

でも本当は洋服ブラシでは
少し固すぎるらしいのです。
理想的な洋服ブラシは、豚毛だとされます。
が、ハット・ブラシにはたいてい馬毛が使われる。
馬毛のほうが豚毛に較べて
やや柔らかいのだそうです。

たとえばスーツの材料は、ウール。
ウーステッド(梳毛糸「そもうし」)などの糸を使って
編上げたもの。
一方、帽子の材料はフェルト。
兎の毛などを集めて、
押し固めたものなのです。
つまり帽子は高級品であればあるほど、
しなやかで、柔かい。
しかも糸を織っているわけではない。
だから布地に較べてほこりが溜りやすい上に、
より繊細な材質ということになります。
やはり一本、ハット・ブラシが欲しいなあ。

そんなことをぼんやり考えながら歩いていると、
ハット・ブラシを売っている店を発見したのです。
場所は東京、千代田区九段下、
「山田ハケ・ブラシ製作所」(TEL 3261-2361)。
ハット・ブラシのみならず、
およそハケやブラシのたぐいなら
たいていのものが揃っています。
しかもその名の通り、
すべて自分のところで作っているのだそうです。
因みにハット・ブラシは一本、4,500円。

俗に思えば叶うと言います。
私のハット・ブラシのように
「欲しいなあ」と強く思っていると、
必ずその願いは叶うのです。


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